ω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)を1日2g以上摂取することで、血中トリグリセライド(TG)濃度とnon-HDL濃度を低下させる可能性が示された。中国・Macau University of Science and TechnologyのTianjiao Wang氏らは、ω-3脂肪酸摂取と血中脂肪濃度の変化について検討したランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施。その結果をJ Am Heart Assoc2023; 12: e029512)に報告した。

ω-3PUFA用量依存性の効果

 これまでの研究で、ω-3PUFA〔アルファリノレン酸(ALA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペント酸(EPA)〕の摂取が血中脂肪濃度の減少とアテローム性動脈硬化による心血管疾患の予防に有効な可能性が示唆されていたが、効果の程度や用量依存性については明らかでなかった。そこでWang氏らはRCTのメタ解析を実施し、ω-3PUFAの摂取による血中脂肪濃度の変化について検討した。

 2019~22年6月にPubMed、EMBASEに登録されたDHA/EPA摂取と血中脂肪〔TG、LDL-C、HDL-C、non-HDL、アポリポ蛋白(apo)B〕の変化との関係を検討したRCTを検索し、RCT 90件・7万2,598例を抽出。Random-effects 1-stage cubic spline regression modelsを用いてω-3PUFAの1日摂取量と血中脂肪濃度の変化の関係を検討した。

 検討の結果、DHA+EPAの1日摂取量と血中TG濃度および血中non-HDL濃度にほぼ線形の関係が認められた。すなわち、対照群(DHA+EPA 1日摂取量0g)と比べてDHA+EPA 摂取群では摂取量の増加に伴い、血中TG濃度、血中non-HDL濃度の低下幅が大きくなった。

 DHA+EPAの1日摂取量が2gの場合、血中TG濃度の平均変化量は−42.61mg/dL(95%CI −53.41~−31.80mg/dL)、血中non-HDL濃度の平均変化量は−4.13mg/dL(同−9.20~ 0.95mg/dL)、3gの場合はそれぞれ−68.90mg/dL(同−98.40~−39.40mg/dL)、−8.31mg/dL(同−11.78~ 4.83mg/dL)だった。

 DHA+EPA摂取量と血中LDL-C、HDL-C濃度の変化量に有意な非線形用量依存性の関係が認められた。DHA+EPA摂取量と血中LDL-C濃度ではJ字曲線の関係が認められ、1日のDHA+EPA摂取量が1gの場合に血中LDL-C濃度の平均変化量は2.91mg/dL(95% CI 0.34~5.47mg/dL)、2gの場合に3.48mg/dL(同1.09~5.86mg/dL)で、DHA+EPA摂取量が1.75gの場合に血中LDL-C濃度の平均変化量がピークに達した。DHA+EPA摂取量と血中HDL-C濃度の関係でもほぼ同様のJ字曲線関係が認められた。すなわち、DHA+EPA摂取がほぼ線形に血中TG濃度とnon-HDL濃度を低下させるが、LDL-C濃度は低下させないという確実なエビデンスが得られた。

脂質異常症、過体重/肥満で特に有効

 さらにサブグループ解析では、脂質異常症と過体重/肥満例でDHA+EPAの1日摂取量2g以上の場合に、血中TG濃度および血中non-HDL濃度に線形の関係が認められた。

 以上から、Wang氏らは「今回行った用量依存性のメタ解析の結果、DHA+EPAの摂取によりほぼ線形に血中TG濃度とnon-HDL濃度が低下することが示された。このTG低下効果は、ω-3PUFA摂取による心血管イベント予防効果を裏付けるエビデンスとなる可能性がある」と結論している。

(大江 円)