米・Stanford University School of MedicineのRebecca A. Bromley-Dulfano氏らは、子宮頸がんスクリーニング(検診)に関するガイドラインの推奨内容と早産リスクとの関連について、人口ベースの大規模データを用いた断面調査で研究で検討し、結果をJAMA Health Forum(2023; 4: e231974)に発表。「初産前の子宮頸がん検診推奨回数の増加と早産リスク上昇に有意な関連が認められた」と述べている。

CIN切除は早産リスク高める

 子宮頸がん検診受診は同がんによる死亡率低下と関連するが、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の切除は早産や低出生体重との関連が指摘されているJ Obstet Gynaecol 2019; 39: 74-81)。CINのがん化リスクの予測は難しいので、米国ではCIN2以上の病変は切除対象となっている。しかし、18~24歳の子宮頸部未切除例(individuals with a cervix;IWCs)を対象とした研究によると、このような病変の60~90%は2年以内に自然退縮するので切除が不要であるばかりでなく(Acta Obstet Gynecol Scand 2016;95:291-298)、CIN既往があり妊娠したIWCsはそもそも早産リスクが高く、切除は早産リスクをさらに高めるとの報告もある(BJOG 2011; 118: 1031-1041)

 米国では、ガイドラインの改訂により子宮がん検診の推奨内容(対象年齢や頻度)が1996~2021年に数回変更されたため、そのことが同期間の早産リスクに影響を及ぼした可能性がある。

 このような背景の下、Bromley-Dulfano氏らは米疾病対策センター(CDC)と国立衛生統計センター(NCHS)のデータを用い、ガイドラインの検診推奨回数に基づく差分の差分法(Difference in differences)による解析を行い、早産リスクとの関連を検討した。

検診推奨の増加は早産リスクと有意に関連

 対象は、1996~2018年に初産で単胎児を出産した18~24歳の女性1,133万3,151例。平均年齢は20.9±1.9歳で、76万6,001例(6.8%)は高血圧および/または糖尿病を有していた。

 このうち早産(妊娠37週未満の分娩)は114万490例(10.1%)、超早産(妊娠34週未満の分娩)が33万3,040例(2.9%)であった。

 解析の結果、ガイドラインの検診推奨回数が1回増加するごとに、早産リスクは0.073%ポイント(95%CI 0.026~0.120%ポイント、Romano-WolfのP=0.001)有意に上昇した。超早産リスクの上昇は-0.00006%ポイント(同-0.020~0.020%ポイント、P=0.99)と有意な関連は認められなかった。

 高血圧糖尿病を有する女性では、ガイドラインの検診推奨回数が1回増加するごとに早産リスクが0.255%ポイント(95%CI 0.109~0.400%ポイント、Romano-WolfのP=0.001)有意に上昇した。

実際の検診回数との比較ではない

 Bromley-Dulfano氏らは「子宮頸がん検診に関する医療政策(ガイドラインの推奨)と早産リスクとの関連について、人口ベースのデータを使って実証的に分析した初めての研究である」と今回の研究の意義を強調。

 一方、「複数の限界もある」として、①NCHSのデータでは子宮頸部細胞診の検査履歴が分からない、②ガイドラインの検診推奨回数を早産リスクの推定に用いたが、実際に検診を受けた回数に基づく解析ではない、③ガイドラインの推奨内容と早産との関連に関する実証的データは提供できたが、子宮頸がん死亡率の低下に関するデータはないため、リスク・ベネフィットの評価ができていない―などを挙げている。

木本 治)