東京大学病院糖尿病・代謝内科の相原允一氏らは、2型糖尿病患者を対象としたグリコアルブミン(GA)測定の有用性を検討する非盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果をDiabetes Ther(2023年8月11日オンライン版)に報告。「GAを2週間に1回測定し、毎回結果を患者に見せることで体重に有意な改善が見られた」と述べている。

GAは1~2週間以内の血糖値を反映する

 過去1~2カ月間の平均血糖値を反映するHbA1cに比べ、GA値は直近2週間の血糖状態を反映するとされ、血糖管理における有用性が期待されている。

 相原氏らは東京大学病院を受診した2型糖尿病患者61例(20歳以上、HbA1c 6.0%以上9.0%未満、インスリンやGLP-1受容体作動薬の注射製剤未使用)を対象に、初診時に血液検査を行いGA値を測定。その後8週間、2週間に1回の来院時にもGA値を測定し、①毎回結果を知らせる群(介入群、30例、男性21例)と、②測定はするが結果は最終来院時にのみ知らせる群(対照群、31例、男性21例)にランダムに割り付けた。初診時の両群の患者背景に差はなかった。

体重が有意に改善し、血糖指標にも改善傾向

 試験の結果、初診時と最終来院時の体重の変化(Δ体重)は、対照群の+0.5kgに対し、介入群では0.0kgと増加が見られなかった。すなわち、Δ体重は介入群で0.5kg有意に低かった。平均Δ体重は、2回目受診時においても介入群で有意に低かった(全てP<0.05)。

 また介入群では対照群に比べ、最終受診時の体脂肪量が有意に少なく、筋肉量は有意に多かった(全てP<0.05)。

 両群における初診時と最終受診時のGA、FPG、HbA1cの変化の差(ΔGA、ΔFPG、ΔHbA1c)については、 t検定で有意な差を認めなかったが、Jonckheere-Terpstra 検定によるtrend(傾向)検定を行ったところ、対照群でΔGAの増加傾向を認めた(傾向性のP<0.001)。相原氏らはこの結果について「2週間に1回のGA測定は、血糖管理にも役立つ可能性を示唆している」と述べている。

涙液や唾液からのGA測定にも期待

 研究の限界について、相原氏らは「単施設の非盲検試験であり、参加者の服薬歴、併存疾患、罹病期間、喫煙状況、収入や教育レベルなどについては不明であった」と指摘。

 一方、GA測定値を来院ごとに伝えることで患者の行動変容が促された可能性があり、体重も改善したことから、「測定値の伝え方や頻度を工夫することで、より大きな行動変容を促す可能性がある。例えば、スマートフォンのアプリを使って測定値をグラフで示すことなどが考えられる」と期待を示している。

 さらに、今回の試験では血中GA値を測定したが、GAは涙液や唾液からも測定可能であり、血中GA値と相関することからDiabetes Res Clin Pract 2023; 199: 110637)、より侵襲性に測定できると付言している。(関連記事「糖尿病管理に涙液中グリコアルブミンが有用」)。

木本 治