米・Stanford University School of MedicineのJustin M. Ko氏らは、重症円形脱毛症(AA)に対するJAK阻害薬バリシチニブ増量の有効性を検討するため、AA患者対象の多施設共同プラセボ対照第Ⅲ相ランダム化比較試験BRAVE-AA1およびBRAVE-AA2のプール解析を実施。その結果、バリシチニブ2mgで奏効せず4mgに増量した患者の25%が、76週時点で毛髪被覆率80%以上を達成したとJAMA Dermatol2023年8月9日オンライン版)に報告した。

52週時点でSALTスコア20超の非奏効例で用量を倍増

 BRAVE-AA1およびBRAVE-AA2は、重症AA患者を対象にバリシチニブの有効性を検討した第Ⅲ相試験。それぞれ2018年9月24日、2019年7月8日に開始され、200週まで追跡した。対象は、ベースライン時でAAの重症度を示すSeverity of Alopecia Tool(SALT、スコア100は全頭の脱毛、スコア0は脱毛なし)スコア50以上の重症AA成人患者1,200例。バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボの3群に3:2:2でランダムに割り付けた。同試験で、バリシチニブ4mgによる治療は同2mgに比べ36週時および52週時の頭皮、眉毛、睫毛の発毛において高い奏効率を示した。

 そこでKo氏らは今回、同試験でバリシチニブ2mg群に割り付けられ効果が得られなかった患者に対して、バリシチニブ4mgへの増量が有効かどうかを検討するため、プール解析を実施した。バリシチニブ2mg群のうち、52週時点でSALTスコア20超の全例を非奏効例として、プロトコルに規定された盲検下でバリシチニブ4mgに増量。76週時までの延長データを報告した。

 主要評価項目は、76週時点でSALTスコアが20以下、臨床医が評価した眉毛と睫毛のClinRO(Clinician Reported Outcome)スコアがベースライン〔スコア2(有意な隙間がある、または不均一な分布)以上〕から2ポイント以上改善し、0または1(完全な被覆または最小限の隙間)を達成した患者の割合とした。

増量は効果不十分例に対して実行可能な治療戦略

 検討の結果、バリシチニブ2mgを投与した340例(平均年齢38.4±12.9歳、女性62.4%)のうち、212例(62.4%)がSALTスコア20超であり、バリシチニブ4mgに増量した。増量した患者の3分の2〔212例中142例(67.0%)〕は、ベースラインのSALTスコアが95~100で、極めて重度のAAだった。

 76週時において、212例中55例(25.9%)がSALTスコア20以下を達成した。また、76週時点で臨床医が報告したClinROスコア0または1を達成した割合は、眉毛では19.3%(161例中31例)から37.9%(161例中61例)に、睫毛では24.1%(137例中33例)から40.9%(137例中56例)に増加した。

 以上を踏まえ、Ko氏らは「バリシチニブ2mgを52週間投与しても毛髪被覆率が80%未満だった患者において、頭皮、眉毛、睫毛の発毛効果を高めるために増量は有効。バリシチニブ2mgで効果不十分な患者に対する同4mgへの増量は、実行可能な治療戦略である」と結論している。一方で、研究の限界として、増量の基準と時期が患者の治療反応に基づいて個別化されておらず、52週時点でSALTスコア20超と決められていた点を挙げ「バリシチニブ2mgの投与期間が長くなれば、SALTスコアが20以下になった患者がいた可能性は否定できない」と述べている。

(今手麻衣)