オーストラリア・University of SydneyのPaul Mitchell氏らは、非盲検前向きリアルワールド観察研究AUSSIEDEXのデータを解析し、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬に抵抗性を示す糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する徐放性デキサメタゾン硝子体内インプラント(DEX)0.7mg(商品名Ozurdex、日本未承認)単独療法の有効性を検討。その結果、VEGF阻害薬からの切り替えタイミングを問わず、DEX開始後52週で中心窩網膜厚(CRT)が有意に改善し、新たな安全性の問題は認められなかったとBMJ Open Ophthalmol2023; 8: e001224)に発表した。

52週間に平均2.3回挿入でBCVAを維持、CRTを有意に改善

 AUSSIEDEX研究では、オーストラリアの25施設で未治療またはVEGF阻害薬に抵抗性のDME患者200例を登録し、DEX単独療法の有効性と安全性を評価した。両眼にDEX療法を行った患者は、最初の治療眼を評価対象とした。DEXは初回の硝子体内挿入後、16週以上の間隔を空けて再挿入可能とした。

 今回の解析には、VEGF阻害薬に抵抗性のDME患者143例を組み入れた。52週の追跡期間中の平均DEX挿入回数は2.3回だった。主要評価項目は、52週時点の最高矯正視力(BCVA)およびCRTのベースラインからの平均変化量とした。

 解析の結果、52週時点の平均BCVAはベースライン(57.8文字)と有意差がなかった(平均変化量1.6文字、P=0.343)。52週時点で、37.4%がBCVAの5文字以上の増加を達成、35.3%が不変(4文字以下の増減)で、全体の72%以上においてBCVAが改善または維持されていた。

 52週時点の平均CRTはベースライン(417.8μm)と比べて有意に改善していた(平均変化量-60.9μm、P≦0.001)。

VEGF阻害薬注射6回以下からの早期切り替えでより大きな効果

 VEGF阻害薬からDEXへの切り替えタイミングは、3~6回のVEGF阻害薬注射後が53例(37.1%、早期群)、6回超の注射後が89例(62.2%、後期群)だった〔1例(0.7%)欠測〕。

 両群とも、52週時点の平均BCVAにベースラインと有意差がなかった。しかし、52週時点のBCVAは後期群と比べて早期群で有意に高値で(群間差9.41文字、95%CI 1.85~16.96文字、P=0.015)、早期切り替えでより大きなBCVA改善が得られることが示唆された。

 52週時点におけるCRTのベースラインからの平均変化量は、早期群(-63.5μm、P≦0.019)、後期群(-59.8μm、P≦0.030)とも有意な改善を示した。

 52週時点で中心窩への脂質沈着が認められた患者の割合は、両群ともベースラインに比べて減少したが、後期群に比べて早期群で減少幅が大きかった(26% vs. 50%)。

眼内炎、緑内障レーザー治療・濾過手術の発生なし

 研究中に予期せぬ治療関連有害事象は発現せず、眼内炎の報告もなかった。最も発現率が高かった有害事象は眼圧上昇で27例(19.1%)に発現したが、眼圧降下薬で管理可能だった。12カ月間に緑内障関連レーザー治療または緑内障濾過手術が必要になった眼はなかった。

 以上の結果から、Mitchell氏らは「DEXはVEGF阻害薬からの切り替えタイミングを問わず、VEGF阻害薬に抵抗性のDMEに対して有効な治療選択肢であることが示された」と結論。「早期・後期DEX切り替えのランダム化比較試験を行って、検証する必要がある」と付言している。

(太田敦子)