自覚症状乏しい網膜静脈閉塞症
~異変に気付いたら受診を(東京女子医科大学病院眼科 飯田知弘教授)~
網膜の静脈が血栓で詰まり、視力障害や眼底出血などを起こす網膜静脈閉塞症は、詰まる箇所によっては自覚症状が乏しく、重い合併症を招くこともある。東京女子医科大学病院(東京都新宿区)眼科の飯田知弘教授は「生活習慣の見直しと血圧管理が重要です。通常は片側性のため、両眼で見ていると症状に気付きにくくなります」と警鐘を鳴らす。
片目で物を見てみると、異変に気付きやすい
▽合併症で失明も
網膜静脈閉塞症には、視神経内の静脈(網膜中心静脈)が詰まる網膜中心静脈閉塞症と、そこから枝分かれした網膜内の静脈が詰まる網膜静脈分枝閉塞症の二つがあり、前者が重篤化しやすい。
飯田教授は「網膜から血液を排出する主要な網膜中心静脈が詰まると、網膜の中心部(黄斑)に浮腫(黄斑浮腫)、網膜全体に出血が起こります。物がかすんだりゆがんだりして見え、視力に影響が出ます」と説明する。網膜静脈分枝閉塞症も同様の症状だが、詰まる場所により、自覚症状に乏しく気付かないうちに進行することもある。
主な原因は、動脈硬化や高血圧。眼底出血を起こす代表的疾患でもある。
進行とともに、傷んだ細胞から新たな血管(新生血管)を作る作用を持つ血管内皮増殖因子(VEGF)が放出される。「新生血管は異常な血管で、突然出血(硝子体出血)を起こして急激な視力低下を招きます」。網膜中心静脈閉塞症では、新生血管が眼内の水分の出口である隅角(ぐうかく)をふさぎ、緑内障を合併しやすくなる。難治性で失明率も高い。
▽薬やレーザー、手術
検査には、視力検査や眼底検査、網膜の浮腫などを診る光干渉断層計検査がある。最初の治療は、黄斑浮腫や新生血管の増殖を抑える抗VEGF薬を目の中に注射する。
「黄斑浮腫が安定するまでは月に1回注射し、その後は網膜や黄斑部の状態や視力を見ながら、必要に応じて注射をします」。黄斑部の細胞が死滅すると視力の回復が難しいので、定期的な受診で再発の兆候を見逃さないことが重要だ。レーザーや手術が検討されることもある。
予防には、暴飲暴食を避け、普段からの血圧管理が大切だ。飯田教授は「片方ずつ物を見てみると、異変に気付きやすくなります。少しでも見え方が変だと感じたら、すぐに眼科を受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/03/06 05:00)
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