全国の待機児童数が5年連続で過去最少を更新したのは、少子化のほか、保育所整備の進展が要因だ。ただ、昨年まで待機児童が少なかった自治体でも、子育て世代の転入により急増したケースがある。保育所があっても保育士が集まらなければ定員まで預かることはできないため、人材不足への対応が急務だ。
 こども家庭庁が自治体に対し、待機児童を解消できなかった理由を複数回答で尋ねたところ、「地域によって保育需要に偏りがあった」「申込者数が想定以上に増加した」「保育人材の確保が困難だった」が多かった。
 滋賀県守山市は、2022年の待機児童が9人だったが、23年は82人に増えて全国最多に。担当者は「1、2歳児の保育ニーズ減少を見込んでいたが、マンション新築や宅地開発があり、入居者の第2子、第3子などの申し込みが増えた」と説明。保育士不足によって子どもを定員まで預かれない園も複数あったという。
 そこで市は、来年4月の待機児童ゼロを目指し、0~2歳児向けの保育施設を新設するなどの対策に力を入れる。さらに、保育士を対象とした支援金の拡充や、採用人数に応じた保育所向け補助制度の創設にも乗り出す。
 保育士確保は全国共通の課題でもある。保育士の有効求人倍率は今年1月時点で3.12倍。全職種平均の1.44倍より高く、働きたい人と比べ、求人数が大きく上回っている。
 岸田政権は少子化対策を重視し、親の働き方を問わず保育所を利用できる「こども誰でも通園制度」の新設や保育士配置基準の改善に取り組む方針。これにより、保育士需要がさらに高まることも予想される。人材確保に向け、処遇改善や過去に働いたことがある「潜在保育士」の再就職支援にも努めるが、実効性が問われる。 (C)時事通信社