重い代謝異常のウォルマン病
~乳児期に発症(大阪市立総合医療センター 山田勇気医長)~
ウォルマン病は、脂肪の分解ができないために多臓器で障害が起きる重い代謝異常である。大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)小児代謝・内分泌内科の山田勇気医長に話を聞いた。
ウォルマン病の特徴
◇早期発見が難しい
細胞小器官の一つであるライソゾームの中には、老廃物を分解し、代謝を維持する多くの酵素が含まれている。そのうち酸性リパーゼ(脂肪の分解酵素)が生まれつきない代謝異常を「ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症」という。中でも、乳児期に発症する重症型がウォルマン病で、「日本の有病率は不明ですが、海外では約53万人に1人と推定されている、まれな病気です」。
主な症状は成長不良と急速な多臓器不全で、腹部が膨満するといった特徴がある。しかし、数少ない病気であるため早期発見が難しく、治療しない場合の平均寿命は約3カ月とされる。「診断前に亡くなっているウォルマン病の乳児がいる可能性もあります」
主な治療は、酵素剤「カヌマ」の点滴による酵素補充療法。山田医長は、2020年に日本で初めてこの療法を始めた。それまで診断できても治療法がなかったウォルマン病の治療が可能となった。
成功の鍵は早期発見だ。今のところ、乳児の先天代謝異常症検査でウォルマン病は対象ではない。ただし、「今後、検査対象にウォルマン病が含まれれば、早期発見の手段になるでしょう」。
◇専門家の情報発信が急務
現在、ウォルマン病に関する情報は乏しいため、専門家による発信とともに、患者会などのネットワークや支援体制づくりが急務だ。「治療できれば、健康な乳児と同じ成長が期待できます。多くの人にウォルマン病を知っていただきたいです」と山田医長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/08/02 05:00)
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