食道がんは、初期であれば標準治療として切除を行うが、周辺臓器への転移が見られるステージIVB(T4b)では切除不能とされ、3年生存率は15~33%と低い。関西医科大学外科学講座准教授の山﨑誠氏らは、切除不能な局所進行食道がんに対する一次治療としての化学療法と化学放射線療法の有用性を比較する多施設共同第II相ランダム化比較試験を行った。その結果、化学療法に比べて化学放射線療法は局所再発を抑える効果が高く予後改善効果が期待できること、一次治療後の外科手術も比較的安全に実施できることをBr J Can (2023; 129 :54-60)に報告した。

84%で根治切除を実施、切除例の2年生存率は56.6%

 対象はT4b食道がん101例。一次治療として化学放射線療法群(50例)と化学療法群(51例)にランダムに割り付けし、2年生存率、根治切除率、安全性などを検討した。

 一次治療後に切除可能となった場合は外科手術を、切除不能の場合は二次治療としてもう一方の治療(化学放射線療法または化学療法)を行い、切除可能かどうかを判定。切除可能となった場合は外科手術を、不能の場合の治療は規定しなかった()。

図. 治療プロトコル

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(関西医科大学プレスリリースより)

 追跡期間中央値は43.8カ月だった。2年生存率は化学放射線療法群で55.1%(95%CI 14.4~68.3%)、化学療法群で34.7%(同22.8~48.9%)と両群で有意差は認められなかった(P=0.11)が、化学放射線療法で予後改善傾向が示された。

 一次治療後に根治切除を施行したのは83例(84%)で、施行例は非施行例に比べて予後が有意に良好だった(2年生存率:56.6% vs. 4.6%)。また、施行例について再発部位の割合を検討したところ、化学療法群で化学放射線療法群に比べ局所、所属内の再発率がいずれも有意に高かった(局所:30% vs. 8%、P=0.03、所属内:37% vs. 8%、P=0.002)。

 これらの結果より、山﨑氏らは「T4b食道がんにおいて化学放射線療法、化学療法を施行し切除可能となった場合、根治切除手術は比較的安全にでき、長期予後が望める」とし、「一次治療としての化学放射線療法は化学療法に比べて局所、所属内の再発を抑える効果が高く、予後改善効果が高い可能性がある」と結論づけた。

栗原裕美