米・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのRobert S. Rosenson氏らは、治療抵抗性高コレステロール血症患者に対する抗アンジオポエチン様蛋白質(ANGPTL)3抗体evinacumabの第Ⅱ相二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の非盲検延長試験結果をJAMA Cardiol(2023年9月13日オンライン版)に報告。「治療抵抗性高コレステロール血症患者に対するevinacumab 15mg/kgの4週ごと静注投与は、LDLコレステロール(LDL-C)を約45%低下させ、その効果は72週まで維持されることが確認された。安全性上の大きな懸念も観察されなかった」と述べている。

第Ⅱ相試験の静注3群を15mg/kgで1年間延長

 ANGPTL3は血管内皮リパーゼとリポ蛋白質リパーゼ活性の阻害などを介し脂質代謝に関与している。ANGPTL3に対する遺伝子組み換えヒトモノクローナル抗体evinacumabは、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)を含む治療抵抗性高コレステロール血症患者のLDL-C値を半減させることが報告されている(関連記事「新機序のevinacumabでLDL-Cが半減」)。

 今回の試験は、この第Ⅱ相試験の二重盲検治療期間(DBTP)中に割り付けられた7つの群〔皮下注の4群(evinacumab 450mg/週、300mg/週、300mg隔週、プラセボ/週)、静注の3群(evinacumab 15mg/kgを4週ごと、5mg/kgを4週ごと、プラセボを4週ごと)〕のうち、静注の3群を対象とした48週間に及ぶ非盲検の延長試験(以下、OLTP)である。OLTPでは全例に対し、evinacumab 15mg/kgを4週ごとに投与した。

 フォーマルな統計学的検定は実施せず、非盲検で1回以上治療を受けた患者を対象に、記述統計による評価を実施した。

LDL-Cは43%以上の低下を維持、他の脂質プロファイルも改善

 計96例〔平均年齢54.4±11.3歳、女性52例(54.2%)〕がOLTPに参加し、88例(91.7%)が48週間のOLTPを完遂した。evinacumabの平均曝露期間は45.8±6.4週間だった。79例(82.3%)がHeFH、17例(17.7%)が家族性高コレステロール血症でない動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)だった。

 ベースライン(DBTP開始時)の全体のLDL-C平均値は145.9±55.2mg/dLだったが、72週時(OLTP終了時)には、平均45.5±28.7%低下した。DBTP中にevinacuma 15mg/kg群、5mg/kg群、プラセボ群だった患者のLDL-C低下割合は、それぞれ43.0±29.5%、49.9%±23.3%、43.8%±32.9%だった。

 OLTP終了時におけるアポリポ蛋白B、non-HDLコレステロール総コレステロールのベースラインからの平均低下率は、それぞれ38.0±22.1%、48.4±23.2%、42.6±17.5%だった。

 重篤な治療関連有害事象が96例中9例(9.4%)に発生したが、いずれも試験薬とは無関係と判定された。

より幅広い集団での検討が望まれる

 Rosenson氏らは、サンプルサイズの小ささと比較的短い治療期間、民族・人種の多様性に欠ける(参加者の90%が白人)という研究の限界はあるものの、「本試験/延長試験は、evinacumab投与によりHeFHであるか否かにかかわらず、治療抵抗性の高コレステロール血症患者のLDL-C値を臨床的に意味のあるレベルまで下げることを示した。その効果は長期間維持されること、忍容性も受け入れ可能なレベルであることも示唆された」と結論。「臨床効果と長期安全性についてよりrobust(頑健)なデータを得るためには、幅広い集団を対象とした大規模試験が必要である」と付言している。

木本 治