中国・Chongqing University Cancer HospitalのJunli Tao氏らは、非小細胞肺がん(NSCLC)の予後とベースラインの脂肪指数の関連を検討するため、NSCLC患者4,434例を対象に後ろ向き研究を実施した。その結果、NSCLC患者の5年生存率はサルコペニアとは関係がなく、皮下脂肪指数および心膜脂肪指数が高いほど高くなるとJ Cachexia Sarcopenia Muscle(2023年9月19日オンライン版)に報告した。

がん患者における脂肪と骨格筋、OSとの関連を検討

 脂肪や筋肉を含む体組成は、がんに直接関連しない予後予測因子として広く注目されている。NSCLC患者において、サルコペニアは全生存(OS)の短縮と有意に関連することが示されているが、脂肪組織とOSとの関連は明らかになっていない。

 そこでTao氏らは、NSCLC患者におけるベースラインの脂肪組織と5年生存率との関連に加え、脂肪組織と骨格筋との関連を検討するため後ろ向き研究を実施した。

 対象は、2014年1月〜16年12月にNSCLCと診断された患者4,434例。組み入れ基準は①初期の診断、②画像保存通信システム(PACS)で入手可能な縦隔条件の胸部CT画像(スライス厚1mm)、③完全な臨床病理学的データ-がそろっていることとした。除外基準は重度の免疫不全または他の悪性腫瘍の既往、評価に不十分なCT画像、治療後6ヵ月の追跡不能とした。

 骨格筋と皮下脂肪の断面積は放射線科医がCT画像により測定・算出し、心膜脂肪体積は心膜脂肪の面積から算出した。骨格筋指数と皮下脂肪指数は、それぞれ骨格筋面積と皮下脂肪面積を身長の2乗で割った値として、心膜脂肪指数は心膜脂肪体積を体表面積で割った値として算出した。体組成と転帰の関連はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。

 主要評価項目は5年生存率とし、OSは手術または化学療法または放射線療法の最初のサイクルから、全死亡または追跡開始から60カ月後までと定義した。

皮下脂肪指数の上昇で死亡リスクが44%減

 4,434例のうち750例〔男性501例(66.8%)、女性249例(33.2%)、平均年齢60.9±9.8歳〕が解析対象となった。ほとんどの患者はNSCLCの家族歴がなく(686例、91.5%)、冠動脈石灰化(476例、63.5%)、糖尿病(664例、88.5%)または高血圧(595例、79.3%)があった。病期はステージⅣが半数近くを占めていた(353例、47.0%)。追跡期間終了時の生存は127例、死亡は623例だった。

 死亡群と生存群を比較すると、サルコペニア、皮下脂肪指数低下、心膜脂肪指数低下は死亡群で有意に頻度が高かった(それぞれ60.8% vs 52.7%、51.4% vs 25.2%、55.4% vs 16.5%、全てP<0.001)。

 多変量Cox回帰分析で臨床変数を調整すると、皮下脂肪指数の上昇および心膜脂肪指数の上昇がOS延長と関連していた〔それぞれハザード比(HR)0.56、95%CI 0.47〜0.66、同0.47、0.40〜0.56、ともにP<0.001)。

 Ⅰ〜Ⅲ期の患者では、皮下脂肪指数の上昇および心膜脂肪指数の上昇が、より良好な5年生存率と関連していた(それぞれHR 0.62、95%CI 0.48〜0.76、同0.43、0.34〜0.54、ともにP<0.001)。Ⅳ期の患者でも同様の結果が得られた。

 手術を受けた患者では、皮下脂肪指数の上昇および心膜脂肪指数の上昇が予後予測因子として残り、良好なOSが予測された(それぞれHR 0.60、95%CI 0.44〜0.80、同0.51、0.38〜0.68、ともにP<0.001)。手術を受けていない患者でも同様の結果だった。

 一方、サルコペニアとOSとの間に関連は認められなかった(P>0.05)。

 以上の結果を踏まえ、Tao氏らは「心膜脂肪指数および皮下脂肪指数はベースラインの胸部CT画像から得られる潜在的な予後予測マーカーであり、非がん関連死およびがん悪液質のリスクのある患者を同定し、ハイリスク患者に的を絞った栄養支援を提供するのに役立つ」と結論している。

今手麻衣