窒息は小児の事故の中でも重要度が高く、日常的に発生するリスクがある。日本小児科学会は9月1日、ポップコーンの未破裂コーンの誤嚥による窒息に関し障害速報を発表した(日本小児科学会雑誌 2023; 127: 1246-1292)。1歳9カ月の女児が、商業施設の自動販売機で購入したポップコーンに含まれていた未破裂のコーンを誤嚥して窒息、心肺停止となり蘇生後にて緊急搬送された。気管支鏡検査で気道に異物を確認後、バスケットカテーテルで摘出された。同学会こどもの生活環境改善委員会は、ポップコーンは窒息リスクの高い食品であり、4歳未満児に与えないよう注意を促した。

気管支鏡検査後、カテーテルで摘出

 報告書によると、昨年(2022年)12月に女児が容器の底に残っていたポップコーンを食べようと、容器を傾け一気に摂取した。直後にむせ込んだため、母親が女児の背部を叩打したところ未破裂のポップコーンを数個吐き出したが、すぐに顔色不良、全身脱力し、反応が消失したという。通行人により心肺蘇生法(CPR)が実施され、1分後に反応が出現して救急要請となった。

 蘇生から1時間後、医療機関に到着時のバイタルサインは体温36.5℃、心拍数172回/分、血圧90/27mmHg、呼吸数20~30/分程度、動脈血酸素飽和濃度(SpO2)99%、Glasgow Coma Scale(GCS)E4V2M2だった。静脈血液ガスはpH 7,103、二酸化炭素分圧(pCO2)74.8mmHg、重炭化イオン濃度(HCO3-)17.7mM/Lで呼吸性アシドーシスを認めた。

 気管挿管後は呼吸終末二酸化炭素濃度(ETCO2)が50mmHg台に落ち着き、胸部CTで右主気管支に6mmほどの異物を認めたため、気管支鏡検査を施行しバスケットカテーテルなどで摘出した()。

図. 胸部CT画像(左上)、摘出後の未破裂コーン(右上)、気管支鏡検査画像(下)

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日本小児科学会雑誌 2023; 127: 1246-1292

 摘出後は心停止後症候群として5日間集中治療室(ICU)で全身管理を行い、13日後に後遺症なく退院した。

これまで年齢制限などは提示されず

 ポップコーンは破裂したものでも窒息リスクが高く、米国小児科学会(AAP)はParenting Websiteで、4歳未満の子供の手の届かないところで保管するよう推奨している。一方、日本ではこれまで、ポップコーンに関し年齢制限や誤嚥に関する注意喚起は行われていなかった。食品を口の中に入れたまま走るなどの行動により窒息や誤嚥につながりやすいが、今回は容器を傾けて一気に摂取したことが窒息リスクを高めたと思われる。

 日本小児科学会は予防について、①ポップコーンは窒息リスクの高い食品であることを知っておく、②食事の際には窒息につながる要因をできるだけ減らす、③ポップコーンを食べる際には未破裂コーンが混在することがあると知っておく、④4歳未満児にはポップコーンを与えない、⑤ポップコーンを食べる際には未破裂コーンを取り除いて1個ずつ食べるーを推奨している。

(平吉里奈)