スウェーデン・Umeå UniversityのMaja af Klinteberg氏らは、小児のアトピー性皮膚炎(AD)の有病率を約10年ごとの3つの大規模小児コホートを対象とした調査で検討。「期間中、スウェーデンの小児のAD有病率は低下傾向を示したが、鼻炎や喘息といったアトピー合併症には増加傾向が見られた」とBr J Dermatol(2023年9月30日オンライン版)に報告した。

保護者への質問票でAD有病率を調査

 過去数十年間にADの有病率は世界的に上昇し、現在、高所得国の小児における有病率は約20%と推定されている。一方、この上昇傾向は低所得国で続いているものの、高所得国では上昇は止まったとの報告もある。

 実臨床においてADの診断はThe U.K. Working Party(UKWP)の診断基準やHanifin & Rajka診断基準に基づいて下されるが、大規模な疫学研究では児や保護者への質問票を使った調査がより現実的だ。

 Klinteberg氏らは、Obstructive Lung Disease in Northern Sweden (OLIN)研究から7~8歳の小児を1996年(3,430例)、2006年(2,585例)、2017年(2,785例)にリクルートし、International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)質問票を用いた調査を実施した。ISACC質問票は保護者の報告に基づくADの有病率推定に広く使用されている(Eur Respir J 1995; 8: 483-91)。調査はスウェーデン北部の内陸山岳地域であるKiruna、およびバルト海沿岸地域のPiteå、Luleåで行った。

 ISAAC質問票の3つの質問(①瘙痒を伴う発疹が6カ月以上続きましたか?、②その発疹は過去12カ月以内にありましたか?、③その発疹は肘の内側、膝の裏側、足首の前面、お尻の下、あるいは首・耳・眼の周囲に現れましたか?)全てにYesと答えた場合をADと定義し、ADと判定された場合はさらに、医師によるAD診断(diagnosis by a physician;D-AD)があるかどうかを尋ねた。

男児よりも女児で有病率高い

 1996年、2006年、2017年コホートにおけるAD有病率はそれぞれ22.8%(781例)、21.3%(551例)、16.3%(453例)で最後の約10年において有意な低下傾向が見られた(P<0.001)。D-AD有病率はAD有病率よりも低かったが、それぞれ、9.3%(318例)、9.4%(244例)、5.7%(159例)で同様の低下傾向が確認された(P<0.001)。

 男女別に見ると、3コホートとも女児のAD有病率が男児よりも有意に高かった(1996年: 24.8% vs. 20.8%、P=0.005、2006年:23.2% vs. 19.6%、P=0.026、2017年:18.9% vs. 13.8%、P<0.001)。しかし、D-AD有病率に関してはいずれのコホートにも有意な男女差はなかった。

 地域別では、各コホートとも、内陸山岳地域(Kiruna)のAD有病率が海沿岸地域(PiteåおよびLuleå)の有病率よりも有意に高く、2017年コホートで差が最も大きかった(22.0% vs. 15.1%、P<0.001)。D-ADについては地域による有意差はなかった。

喘息合併率は上昇傾向続く

 瘙痒を伴う発疹による睡眠障害は、3コホートともD-ADの方がADよりも有意に多かった(1996年:31.8% vs. 15.8%、2006年:41.0% vs. 26.4%、2017年:42.8% vs. 21.8%、全てP<0.001)。

 AD児の合併症に関して、喘息は12.2% (1996年) 、15.8% (2006年) 、 23.0% (2017年)と一貫して増加していた(P<0.001)。アレルギー性鼻炎とアレルギー感作の合併については、1996年が15.0%、27.5%、2006年が24.7%、49.5%と上昇が見られたが、2017年コホートでは21.0%、46.7%と頭打ちの傾向が見られた。

 以上の結果を踏まえKlinteberg氏らは「スウェーデン北部の就学児を対象とした3つの年代のコホート調査において、最新のコホートでADの有病率の低下傾向が示されたが、AD児における合併症、特に喘息の有病率の上昇傾向は懸念材料である」と結んでいる。

木本 治