不安障害はさまざまな疾患の患者に見られ、QOLの低下と関連するだけでなく、医師・患者間の関係構築や効果的な治療の提供、ひいては臨床転帰に悪影響を及ぼすことが危惧される。これまで皮膚科領域では、乾癬などの特定の皮膚科疾患における不安障害の有病率が報告されているが、皮膚科外来患者全般における有病率を検討したものはない。オーストラリア・Black Dog InstituteのB. Storer氏らは、皮膚科外来患者における不安障害の有病率を検討するシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、26.7%と4人に1人が不安障害を抱えていることが推定されたとJ Eur Acad Dermatol Venereol(2023; 37: 1466-1467)に報告した。
32件1万2,812例を抽出
Storer氏らは、PubMed、EMBASE、Cochrane、PsycINFOに2022年9月7日までに収載された文献から、16歳以上の皮膚科外来患者を対象に不安障害の有病率を評価した研究を検索。システマチックレビューとランダム効果モデルによるメタ解析を実施した。
検索の結果、5,423件を同定し、32件・1万2,812例を組み入れた。32件の内訳は、横断研究19件、有病率研究10件、症例対照研究3件で、地域別に見ると欧州11件、アジア6件、中東4件、北米、南米、アフリカが各3件。不安障害の病態(重複あり)については全般的な不安症状/診断24件、強迫性障害8件、全般性不安障害5件、パニック障害3件、社交不安症/恐怖症2件、広場恐怖2件、疾病不安障害1件、身体化障害1件、心的外傷後ストレス障害1件だった。
乾癬外来患者では34%
32件中2件が女性または高齢者のみを対象としており、1件は有病率100%との報告だったため外れ値として除外、最終的に29件を組み入れてメタ解析を実施した。その結果、不安障害の有病率は26.7%〔95%CI 22.4〜31.4%、95%予測区間(PI)9.6〜55.4%〕と推定された。
しかし、不安障害の有病率は研究ごとに大きく異なり(範囲2.9〜67.8%)、有意な異質性が見られた(P<0.001、I2=96.0%)。そこで、不安障害の有病率を診断方法、病態、国別に見たサブグループ解析を行った。
診断方法別に見ると、不安と抑うつの評価尺度の不安下位尺度(HADS-A)では34.3%(95%CI 27.7〜41.6%、95%PI 12.2〜66.2%、I2=97.2%、P<0.001)、その他の自己申告尺度では27.5%(同20.5〜35.7%、7.4〜64.2%、I2=69.7%、P=0.019)、問診では14.8%(同8.9〜23.6%、2.1〜58.0%、I2=95.2%、P<0.001)と、不安障害の診断方法による有病率に有意差が示された(P=0.004)。
病態別の検討が唯一可能だった乾癬と、皮膚疾患全般および他の特定の皮膚疾患における不安障害の有病率を比較したところ、乾癬では33.9%(95%CI 28.8〜39.5%、95%PI 18.6〜53.6%、I2=83.0%)、皮膚疾患全般では27.0%(同20.8〜34.2%、8.6〜59.1%、I2=97.0%)、他の特定の皮膚疾患では15.1%(同7.2〜28.8%、0.9〜76.8%、I2=96.6%)と、病態間で有意に差が認められた(P=0.026)。
先進国と開発途上国に分類し有病率を推定したところ、先進国では26.8%(95%CI 20.9〜33.6%、95%PI 8.2〜60.0%、I2=96.4%)、開発途上国では28.5%(同23.4〜34.3%、13.7〜50.1%、I2=91.2%)で、両者に差はなかった(P=0.547)。
皮膚科医は不安障害の特定と支援を
以上から、Storer氏らは「皮膚科外来患者における不安障害の有病率を評価した最初の研究である。不安障害は特に乾癬外来患者に多く見られ、全体でも26.7%と既報の一般集団における有病率(4.8〜10.9%)よりも高かった」と結論。研究の限界として、「皮膚科外来患者における不安障害の有病率を評価した研究は少なく、サブグループ解析で明らかにするだけの統計学的検出力に乏しかった」ことを挙げている。
加えて、「不安障害は治療可能であり、心理療法や薬物療法などの効果的な治療選択肢があるため、精神科医への紹介および連携が有益と考えられる。皮膚科医は、不安障害が患者にどのような影響を及ぼす可能性があるか、不安障害を有している患者をどのように特定し、支援するかを検討すべきである。不安障害に対処し、適切な心理社会的ケアを提供することは、患者のメンタルヘルスに有益なだけでなく、皮膚疾患の転帰の改善にも役立つ可能性がある」と付言している。
(編集部)