大阪大学大学院社会医学講座環境医学/中国・Peking University Health Science CenterのHang An氏らは、日本人のがんリスク評価を目的として1988年に開始された大規模前向きコホート研究Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC Study)の参加者5万例超のデータを用い、余暇および仕事での身体活動と膀胱がんの発症リスクとの関連を検討。その結果、レクリエーションスポーツ活動や仕事における立つ、歩くという身体活動が膀胱がんの発症リスク低下に関連していたとCancer Res Treat(2023年10月6日オンライン版)に発表した。
関連性は男性でより顕著
解析対象は、40~79歳でJACC Studyに参加した日本人のうち、がんおよび心血管疾患の既往歴がなく、身体活動に関する自己記入式の質問票に回答した5万374例(男性2万1,219例、女性2万9,155例)。中央値で17.5年の追跡期間中に、153例(男性116例、女性37例)が膀胱がんを新規発症していた。
解析は年齢、性、研究実施地域、BMI、喫煙状況、飲酒状況、糖尿病および高血圧の既往症、がんの家族歴、テレビの視聴時間、職業などの交絡因子を調整後のCox比例ハザードモデルにより実施。その結果、レクリエーションスポーツ活動をほとんど行っていない者と比べて、活動時間が長い者ほど膀胱がんのリスクが低下する用量反応関係が認められた。膀胱がんの調整後ハザード比(aHR)は活動時間が週1~2時間で0.67(95%CI 0.38~1.20)、週3~4時間で0.79(同0.36~1.74)、週5時間以上で0.28(同0.09~0.89)だった(傾向性のP=0.017)。
また、仕事での身体活動度が最も低い者(ほとんど坐位)と比べて、最も高い者(立位および歩行)で膀胱がんのリスクが有意に低かった(aHR 0.53、95%CI 0.32~0.85)。しかし、仕事での身体活動が坐位および立位(同0.68、0.37~1.25)、ほとんど立位(同1.22、0.63~2.36)の者では有意なリスク低下は認められなかった。
スポーツ活動および仕事での身体活動と膀胱がんリスクとの関連は、女性に比べて男性で顕著だった。特に、レクリエーションスポーツ活動時間が週5時間以上の男性(aHR 0.33、95%CI 0.10~1.00)、仕事での身体活動が立位および歩行の男性(同0.57、0.33~0.98)で膀胱がんリスクが大幅に低下していた。
1日の歩行時間、テレビ視聴時間は関連せず
一方、1日の歩行時間およびテレビ視聴時間と膀胱がんリスクに有意な関連は認められなかった。
以上の結果から、An氏らは「中高年の日本人集団において、レクリエーションスポーツ活動の時間が長い者、仕事での身体活動度が高い者(立ったり歩いたりしている者)ほど膀胱がんのリスクが低かった」と結論している。
さらに、「アジア人集団では全般的に労働時間が長いという報告があることから(J Contemp Asia 2016; 46: 700-722)、1日の身体活動量の推定には仕事での身体活動を含める必要があると思われる」と指摘し、「今後の研究で、日本人以外のアジア人集団においても身体活動度と膀胱がんリスクとの関連を確認する必要がある」と付言している。
(太田敦子)