熊本大などの研究チームは13日までに、がんを抑制する働きを持つたんぱく質が卵子の形成に関与していることを突き止め、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表した。成果は女性の不妊症解明などへの貢献が期待できるという。
 精子や卵子がつくられる際、途中から通常の体細胞分裂と異なり、染色体数が半減する「減数分裂」に切り替わる。思春期以降、一生つくられ続ける精子と異なり、卵子の減数分裂は胎児期のごく限られた期間にしか起きず、その仕組みはよく分かっていなかった。
 熊本大の石黒啓一郎教授らは、減数分裂時だけ発光する緑色蛍光たんぱく質(GFP)をマウスに組み込み、働いている三つのたんぱく質を突き止めた。
 一つは石黒教授らが2020年、減数分裂に切り替えるスイッチ役を果たすと特定した「マイオーシン」だった。減数分裂を進める「STRA8」と結合しており、STRA8ががん抑制たんぱく質「レチノブラストーマ」(RB)とも結合していることが新たに判明した。
 STRA8とRBが結合できないようにしたマウスで調べたところ、胎児期の減数分裂への切り替えが遅れ、つくられた卵子も早期に死滅した。RBは細胞増殖の暴走を抑える「ブレーキ」となることから、STRA8との結合はブレーキを一時的に緩め、減数分裂への切り替えを促していることが分かったという。
 ヒトでも同様の仕組みがあるといい、石黒教授は「細胞増殖を抑制する抗がん剤などは影響する可能性がある。医療関係者など妊娠期の投薬を判断する人には、この研究を知って、考慮してもらいたい」と話した。 (C)時事通信社