フランス・Institut Gustave RoussyのDavid Planchard氏らは、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する一次治療としてのオシメルチニブ単剤療法と同薬+化学療法併用療法を比較した第Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験(RCT)FLAURA2の結果をN Engl J Med(2023年11月8日オンライン版)に発表。「オシメルチニブ+化学療法は単剤療法群と比べ、無増悪生存(PFS)を有意に延長した」と述べている。

単剤療法では大半の患者はいずれ進行

 オシメルチニブは第三世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、第一世代EGFR-TKIと比較したFLAURA試験において、EGFR変異陽性進行NSCLCのPFSと全生存(OS)を有意に改善することが報告されている(N Engl J Med 2018; 378: 113-25N Engl J Med 2020; 382: 41-50)。

 しかし、一次治療としてのEGFR-TKI単剤療法を受けた患者の大半はいずれ病勢が進行する。第一世代EGFR-TKIのゲフェチニブ+カルボプラチン/ペメトレキセドがゲフィチニブ単剤よりも良好な転帰をもたらすとの報告があることから(J Clin Oncol 2022; 40: 3587-92)、Planchard氏らは「単剤で第一世代EGFR-TKIより優れた効果が証明されているオシメルチニブも、プラチナ製剤およびペメトレキセドへの上乗せによりオシメルチニブ単剤を上回るベネフィットが期待できる」との仮説を立てて検証した。

非盲検試験だが中央判定で盲検下での評価も追加

 2020年6月1日~21年12月22日に、EGFR変異陽性(Exson19欠失またはL858R変異)で進行がんに対する全身療法未施行の局所進行/転移NSCLC患者557例(18歳以上、日本は20歳以上)を登録。化学療法併用群〔279例:オシメルチニブ(1日1回80mg)+ ペメトレキセド(500mg/m2)+ シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(薬理学的に妥当な用量。5mg/mL/分の血中濃度-時間曲線下面積で算出)〕と単剤療法群(278例:オシメルチニブ1日1回80mg)にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は担当医評価によるPFS。副次評価項目はOS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間、安全性などとした。また、盲検下独立中央判定による評価も行った。

PFS中央値は25.5カ月 vs. 16.7カ月

 患者背景は、年齢中央値が化学療法併用群61歳 vs. 単剤療法群62歳、 男性38% vs. 39%、アジア人64% vs. 63%、EGFR変異はExon 19欠失が61% vs. 60%、L858R変異が38% vs. 38%と差はなかった。

 PFS中央値は、単剤療法群の16.7カ月に対し化学療法併用群では25.5カ月と有意に延長した〔ハザード比(HR)0.62、95%CI 0.49~0.79、P<0.001〕。24カ月時点で単剤療法群の41%(95%CI 35~47%)、化学療法併用群の57%(同 50~63%)が病勢進行なしで生存していた。盲検下独立中央判定によるPFSも主解析と一貫していた(HR 0.62、95%CI 0.48~0.80)。

 ORR(完全奏効 + 部分奏効)は単剤療法群76%、化学療法併用群83%、奏効期間中央値はそれぞれ15.3カ月(95%CI 12.7~19.4カ月)、24.0カ月(同 20.9~27.8カ月)、だった。

 グレード3以上の有害事象は単剤療法群の75例(27%)、化学療法併用群の176例(64%)に発生した。

腫瘍内不均一性が克服された可能性

 以上の結果を踏まえ、Planchard氏らは「一次治療としてのオシメルチニブ+ペメトレキセド/プラチナ製剤併用レジメンは、オシメルチニブ単剤療法に比べて、EGFR変異陽性の進行NSCLC患者のPFSを有意に延長した」と結論。

 EGFR変異陽性のNSCLCのみを対象とした試験で化学療法の併用が付加的ベネフィットをもたらした理由について、同氏は「現時点で正確な機序は分からない」としながらも、「オシメルチニブは極めて選択性の高いEGFR-TKIあるのに対し、ペメトレキセドとプラチナ製剤はEGFR変異の有無によらない幅広い抗腫瘍効果を有する。今回の試験でPFSが改善したのは、併用化学療法が多様ながん細胞ポピュレーションを攻撃することで、腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)が克服された可能性がある」と指摘。その上で、「現在、リキッドバイオプシーによるDNA解析を含めた探索的解析が進行中であり、その結果が出れば化学療法併用の効果予測マーカーに関する洞察も得られるかもしれない」と付言している。

木本 治