治療・予防

見つけにくく、若年でも発症―スキルス胃がん 
定期検査で早期発見を

 胃がんは早期に発見されやすいがんの一つだが、スキルス胃がんは進行した段階で見つかることが多い。日本大学病院(東京都千代田区)消化器病センターの池原久朝医師に、その特徴と治療法について聞いた。 

 ▽散らばって広がるがん

 胃がんは、胃の表面の粘膜にがんが発生し、ほっておくと次第に広く、深く増殖していく。がんが粘膜下層にとどまるものを早期胃がん、筋層に達したものを進行がんと呼ぶ。進行胃がんは、がんの形状から1~4型に分類され、4型(びまん浸潤型)をいわゆるスキルス胃がんと呼ぶ。

 胃粘膜の表面にがんの塊ができるのではなく、胃粘膜の下に砂をまいたように散らばって広がっていくのが特徴だ。胃の表面に変化が表れにくいため、早期発見が難しい。20~40代でも発症する厄介ながんだ。

 「初期は無症状の場合が多いですが、進行すると胃が収縮した状態で固まってしまい、さまざまな症状が表れます」と池原医師。食べ物がつかえる、胃がもたれるなどの自覚症状が見られたときには、がんが他臓器に広がる進行がんの段階であることが多い。

 ▽ピロリ菌の有無の確認を

 スキルス胃がんを含む進行胃がんのうち手術が難しい場合には延命を目的に、数種類の抗がん薬を組み合わせた薬物療法が行われる。がん細胞の増殖に関わるタンパク質HER2が陽性の場合、分子標的薬のトラスツズマブの併用が有用で、陰性ならティーエスワンやシスプラチンなどの抗がん薬が使用される。

 近年登場した免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブやペムブロリズマブにも、胃がんの適応がある。ただ、池原医師は「期待が高い薬剤ですが、胃がんでは従来の薬物療法を凌駕(りょうが)するわけではありません。また、従来の抗がん薬にない免疫関連の難治性の副作用が起こる可能性があります。薬剤費も非常に高額であることから、従来の薬物療法で効果がない人などへの2番手、3番手の治療法です」と話す。

 ヘリコバクター・ピロリ菌の感染者は、胃がんのリスクが非感染者と比べて非常に高くなるという研究報告がある。スキルス胃がんは遺伝的な要素も否定できないため、家族にスキルス胃がんの患者がいる場合は、消化器内科医と相談の上、定期的な検査が勧められる。「スキルス胃がんは進行が早いといわれますが、発生から数カ月で手術が困難になるわけではありません。ピロリ菌を除菌した上で年1回程度の内視鏡検査を受け、手術で治療が可能な段階での発見を目指すことが重要です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)


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