若い男性に多い精巣腫瘍
治療で8~9割は治癒
精巣腫瘍とは男性の精巣(睾丸=こうがん)にできる腫瘍だ。発症頻度は10万人に1人程度とまれな病気だが、20代から30代の若い世代に多く、この年代の男性にできる固形腫瘍(血液のがんを除いた腫瘍)の中では最も多い。治療法が確立されており、高い割合で治癒が期待できるのも特徴だ。
▽抗がん剤で高い効果
精巣腫瘍は、睾丸に硬いしこりができたり、全体的に腫れてきたりして気付く場合が多い。痛みを伴う例は比較的まれだ。また、精巣の摘出に関係なく、男性不妊症になる場合もあり、不妊症治療で病院を受診して発見されるケースもあるという。
杏雲堂病院(東京都千代田区)腫瘍内科科長の河野勤医師は「腫れやしこりの大きさと病状の進行度には、必ずしも関連性はありません。小さなしこりでも異常に気付いたら、すぐに受診をしましょう」と話す。
治療法は、がんの種類や進行度によって異なる。精巣腫瘍は「セミノーマ(精上皮腫)」とそれ以外の「非セミノーマ」の二つのタイプに分類される。セミノーマには放射線治療が有効だが、非セミノーマでは効果が期待できないとされる。
いずれのタイプも、腫瘍が精巣のみにとどまっている〓期では、精巣の摘出手術でほとんどが治る。腹部のリンパ節に転移がある〓期は、精巣摘出後に放射線治療か抗がん剤治療が選択される。肺などに遠隔転移がある〓期では、精巣摘出後に抗がん剤治療が行われる。
抗がん剤は、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種類の薬を併用する「BEP療法」が標準治療だ。「腫瘍マーカーの数値や転移した臓器によって、経過が良好、中程度(中間)、不良の三つの群に分類します。近年の国内成績では、経過が良好な群で98%、中程度で89%、不良でも83%が治癒しています」
▽治療で不妊症に
精巣腫瘍は治療で治る可能性が高いが、まれな病気のため治療を適切に行える医師が少ない点が問題だという。また、治療前は不妊症でなくても、抗がん剤や放射線治療によって生殖機能が低下する例がある。「精巣は左右二つあるので、片方を摘出しても生殖機能が損なわれるわけではありません。ただし、精巣腫瘍の患者はもともと何らかの理由で精子を作る能力が通常より低下しやすいと言われます。また、がん治療の影響で不妊症になる可能性があるため、抗がん剤治療の前に精子を凍結保存しておくことが大切です」と河野医師はアドバイスする。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/13 10:20)