近年、世界的にアレルギー疾患が増加傾向にあり、さまざまな要因が関連していると考えられている。富山大学小児科学講座の清水宗之氏〔現・糸魚川総合病院(新潟県)小児科医長〕らは「子どもの健康と環境に関する全国出生コホート研究(エコチル調査)」に参加する母児7万3,209組を対象に、妊娠中のビタミンD摂取量と児の3歳時におけるアレルギー疾患との関連について調査した結果をInt Arch Allergy Immunol2023; 184: 1106-111)に報告。妊娠中のビタミンD摂取量が多いと、一部のアレルギー疾患の発症が抑制される可能性があることが分かった。

アレルギー性鼻炎と花粉症で有意な関連

 ビタミンDは免疫系において重要な役割を果たすことが知られており、小児期のビタミンD不足は、アレルギー疾患の発症や重症化に関連すると指摘されている(Front Nutr 2023 : 9: 1032481)。清水氏らは、妊娠中の母親をビタミンDの摂取量によって5つの群に層別し、各群において児の3歳時点でのアレルギー症状(喘鳴、アレルギー性鼻炎、アレルギー性鼻結膜炎、アトピー性皮膚炎)の有無および、3歳までにアレルギー疾患(気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎)と診断されたことがあるかについて調査した。ビタミンDの摂取量は食物摂取頻度調査票を用いて推算し、アレルギー症状については、International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)質問票により評価した。

 検討の結果、3歳時点でアレルギー性鼻炎の症状を有するオッズ比(OR)は、妊娠中のビタミンD摂取量が最も少ない第1五分位群と比べ、第3~5五分位群では有意に小さいことが分かった。また、3歳までの花粉症の診断歴のORは、第1五分位群と比べ第2~4五分位群で有意に小さかった()。アレルギー性鼻結膜炎などの他の項目では、ビタミンD摂取量との明らかな関連は認められなかった。

図.ビタミンD摂取量とアレルギー疾患との関連

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(富山大学プレスリリースより)

 なお、今回の研究における妊娠中のビタミンD摂取量の平均値は1日当たり4.7μgで、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で示されている妊婦の目安量8.5μgより大幅に少なかった。

 同氏らは「幼少期におけるアレルギー性鼻炎の罹患は、後の気管支喘息発症のリスクになる可能性が指摘されており、妊娠中のビタミンD摂取量を増やすことでそういったアレルギー疾患のリスクを減らせる可能性がある」としている。

(編集部)