治療・予防

自律神経の乱れで鼻水
中年女性に多い寒暖差アレルギー(大阪市立大学医学部付属病院耳鼻咽喉科 阪本浩一病院教授)

 スギ花粉などが原因でくしゃみや鼻水などが出るのがアレルギー性鼻炎だが、暖かい場所から寒い場所へ移動した時や冷気を吸うなどの「寒冷刺激」によってアレルギー性鼻炎のような症状が表れることがある。俗に「寒暖差アレルギー」と呼ばれる。大阪市立大学医学部付属病院(大阪市)耳鼻咽喉科の阪本浩一病院教授は「アレルギーではなく、自律神経の調整が乱れるためと考えられます。治療を受ければ症状は改善します」と話す。

寒暖差アレルギー

寒暖差アレルギー

 ▽冷気に鼻粘膜が反応

 朝起きた時やクーラーの効いた部屋に入った時に鼻水がしばらく止まらない。そのような症状が寒暖差アレルギーによるものと言われる。阪本病院教授は「医学的には『血管運動性鼻炎』の症状に類似しています。血管運動性鼻炎は、アレルギー性鼻炎のような症状があっても、検査でアレルギーと確定できない場合に考えられる病気の一つです」と説明する。

 寒暖差アレルギーは体のさまざまな機能を調節する自律神経の乱れが原因で起こると考えられている。自律神経は、活動する時に優位になる「交感神経」と逆にリラックスまたは安静時、就寝時に優位になる「副交感神経」の2種類があり、朝目覚めて活動し始めると交感神経の方が優位になるなど、うまく調整されている。

 ところが、寒暖差アレルギーの人ではこの調整がうまくいかない。朝の冷たい空気や急激な温度変化に対して、鼻の粘膜で「水分を分泌せよ」という副交感神経の指令が活発になり、鼻水が出るというわけだ。

 患者は中年女性や高齢の男女に多いという。一方、アレルギー性鼻炎は国民の2人に1人が罹患(りかん)しているため、中には寒暖差アレルギーを合併する人もいる。アレルギー性鼻炎で鼻の粘膜が過敏になっていると、寒冷刺激にも反応しやすいとされる。

 ▽薬で対処可能

 寒冷刺激による鼻症状の治療は症状を抑える対症療法が基本となる。「鼻に噴霧するステロイド薬を使うことが多い」と阪本病院教授。鼻に限定して効果を示し、全身への影響が少ないことが期待される。鼻水の分泌を抑える抗ヒスタミン薬の貼付剤が使われることもあり、体内の薬の濃度が一定に保たれて朝方の症状が生じにくくなるという。症状をコントロールできればいったん休薬し、寒暖差がある時期に再開するといった方法もある。

 阪本病院教授は「寒冷刺激による鼻の症状があれば、耳鼻咽喉科を受診しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス