タファミジスは、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者の生存率を改善することがプラセボとの比較で示されている。ただし、心機能への影響は完全には解明されていない。米・Northwestern University Feinberg School of MedicineのSanjiv J. Shah氏らは、第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)Tafamidis in Transthyretin Cardiomyopathy Clinical Trial (ATTR-ACT)の心エコーデータを事後解析し、ATTR-CM患者におけるタファミジスの左室機能への影響を検討。プラセボと比べ、タファミジスが左室機能の低下を抑制したことをJAMA Cardiol2023年11月15日オンライン版)に報告した。

国際RCT 436例の心エコーデータを比較

 今回の研究は、2013年12月~18年2月に実施された国際共同多施設二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相RCTであるATTR-ACTの探索的事後解析である。13カ国48施設で18~90歳のATTR-CM患者441例を登録し、タファミジスメグルミン80mg/日(176例)、同20mg/日(88例)、プラセボ(177例)の3群にランダムに割り付け30カ月投与した。

 登録時の左室駆出率(LVEF)に基づく心不全分類により、患者をHFpEF群(50%以上)、HFmrEF群(41~49%)、HFrEF群(40%以下)に層別化。主要評価項目は、心エコー検査による収縮機能の3指標〔LVEF、左室拍出量(LVSV)、左室長軸方向ストレイン(LVGLS)〕と拡張機能の2指標(中隔側および側壁側のE/e'比)のベースライン時から30カ月時点の変化量とし、ATTR-CMに対するタファミジスの承認用量である80mgとプラセボの2群を比較した。

 心エコーデータが得られたのは合計436例(平均年齢74±7歳、男性90.1%)。ベースライン時において、HFpEF群は220例(50.5%)、HFmrEF群は119例(27.3%)、HFrEF群は97例(22.2%)だった。

LVEFを除く4指標で悪化を有意に抑制

 30カ月後の心エコー検査値の5指標の悪化は、いずれもプラセボ群と比べタファミジス80mg群で軽微だった。両群間の最小二乗平均差は、LVEFが2.09%(95%CI -0.62~4.79%、P=0.13)、LVSVが7.02mL(同2.55~11.49mL、P=0.002)、LVGLSが−1.02%(同−1.73~−0.31%、P=0.005)、中隔側E/e'比が−3.11(同−5.50~−0.72、P=0.01)、側壁側E/e'比が−2.35(同−4.01~−0.69、P=0.006)で、LVEFを除く4指標で有意差が見られた。

 ベースライン時のLVEFは、全死亡、心血管イベントによる入院、心エコー検査による心機能評価指標の変化に対するタファミジスの効果に影響を与えなかった。

 これらの結果から、Shah氏らは「タファミジス80mgの30カ月投与は、プラセボと比べATTR-CM患者における左室機能の低下を抑制した」と結論。また、約半数の患者が登録時にHFmrEFまたはHFrEFであったが、HFpEF患者同様に効果が得られていたことから、「LVEFに関係なく、全ての心不全患者でATTR-CM診断を考慮すべき。ATTR-CM患者における心機能低下の進行を抑制するために、早期の診断および介入が必要である」と指摘している。

(小路浩史)