スポーツ庁は、昨年(2023年)4~7月に全国の小学5年生約99万人と中学2年生約92万人を対象に実施した「2023年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を発表。実技テストの体力合計点は、2022年度調査と比べ男子で回復基調にあるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以前の水準には至っていなかった。また、1週間当たりの総運動時間は2022年度に比べわずかな減少が見られた一方、「睡眠時間が8時間以上」と「1日のスクリーンタイムが4時間以上」の割合は増加していた。

握力、上体起こし、50m走など8項目で評価

 調査は小学5年生99万165人、中学2年生92万3,980人に対し実施した。実技テストの内容は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルランまたは持久走(男子1,500m、女子1,000m)、50m走、立ち幅と跳び、ソフトボール投げ(小学生)またはハンドボール投げ(中学生)の8項目。さらに、質問紙を用いて1週間の総運動時間や体格、生活習慣、運動に対する意識などを調べた。

 調査の結果、体力合計点の平均値は、小学生では男子が52.6点で2022年度調査に比べ0.3点上昇、女子が54.3点で2022年度と同じだった。中学生では男子が41.2点と、2022年度に比べ0.3点上昇、女子が47.1点で0.2点低下した()。

図. 男女別に見た小・中学生における体力合計点の経年変化

51217_fig01.jpg

2022年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果「調査結果の概要」)

女子はほぼ全ての項目で低下

 各実技テスト項目の平均点はの通り。

表. 男女別に見た小・中学生における実技テスト項目ごとの平均点

※中学生のみ持久走または20mシャトルランのいずれかを選択可

(2023年度 全国体力・運動能力、運動習慣調査の結果(概要)についてを基に編集部作成)

 各項目を2022年度およびCOVID-19流行以前の2019年度と比較した。その結果、小学生男子では握力以外の項目は2022年度より上昇していたが、2019年度との比較で上昇したのは長座体前屈のみで、他の項目は全て低下していた。小学生女子では、2022年度に比べ上体起こしと長座体前屈は上昇したが、2019年度との比較で、上昇したのは男子と同様に長座体前屈のみだった。

 中学生男子では、握力以外の全ての項目で2022年度に比べ上昇しており、2019年度と比べると握力、長座体前屈、50m走、立ち幅跳びが上昇していた。中学生女子では、2022年度に比べ長座体前屈と50m走は上昇していたがハンドボール投げは同等で、それ以外の項目は全て低下しており、2019年度と比べると長座体前屈以外全て低下していた。

 各項目について2008年度から2023度までの経年変化を見ると、いずれも横ばいや微増、微減など大きな変化は見られなかったが、20mシャトルランおよび持久走については、小・中学生のいずれも男女とも2019年以降に大幅な低下傾向が示され、特に女子では小・中学生とも2023年度が最低値だった。

運動時間は減り、睡眠時間とスクリーンの視聴時間は増加

 質問表の結果について「体育の授業以外で1週間の総運動時間が420分以上」と答えた割合は、小学生の男子が50.0%、女子が27.3%で、2022年度に比べそれぞれ0.1%ポイント、1.9%ポイント減少した。同様に中学生では男子が76.2%、女子が55.9%で、2022年度に比べそれぞれ1.9%ポイント、1.8%ポイント減少した。

「睡眠時間が8時間以上」と答えた割合は小学生の男子が67.6%、女子が70.0%で、2022年度に比べそれぞれ0.9%ポイント、0.8%ポイント増加した。中学生では男子が29.2%、女子が21.6%で、2022年度に比べ男女ともに1.4%ポイント増加した。

「平日に学習以外のスクリーンタイム(テレビやスマートフォン、ゲームなどの視聴時間)が1日4時間以上」と答えたのは小学生の男子が28.0%、女子が23.6%で、2022年度に比べそれぞれ0.9%ポイント、1.6%ポイント増加した。中学生では男子が29.1%、女子が27.7%で、2022年度に比べそれぞれ0.8%ポイント、1.6%ポイント増加した。

運動の楽しさ、喜びを味わえる取り組みを支援

 スポーツ庁は、今回の調査結果について「2022年度に比べ体力合計点は全体として横ばいまたは向上傾向であった」と結論。理由について「COVID-19流行下でも、教師が生徒たちに運動の大切さを伝えることや、生徒たちが工夫しながら運動を継続してきたことに加え、徐々に行動制限が緩和されたことによる」と述べている。

 一方で、体力や運動能力の低下につながりかねない生活習慣が進んでいる点について「学校と家庭、地域が一体となって子供の生活習慣と良好な運動習慣の形成に努めるべき」としている。今後もスポーツ庁では生徒が運動の楽しさや喜びを感じられるような学校、家庭、地域の連携した取り組みを支援していく、と展望している。

(平吉里奈)