亜鉛含有ジェルの腟内投与が外陰腟カンジダ症(VVC)の予防に有用な可能性が示された。英・University of ExeterのElena Roselletti氏らは、マウスを用いた動物実験および女性患者10例による小規模パイロット試験で検討した結果、Candida albicansC. albicans)感染による腟の炎症にはC. albicansの亜鉛取り込みに関わる亜鉛結合蛋白質PRA1が関与しており、亜鉛がPRA1発現を抑制することが示されたとSci Transl Med2023; 15: eadi3363)に発表した。

感染例でカンジダの亜鉛結合蛋白質PRA1が高発現

 再発性VVCにおける現行の治療ガイドラインでは、フルコナゾールなどの抗真菌薬を6カ月間投与することになっているが、投与中止後6カ月以内に過半数が再感染しており、耐性菌発現の報告もある。感染予防のためには、C. albicansが炎症を引き起こすメカニズムを解明することが重要だが、免疫病態の基礎となる分子メカニズムはよく分かっていない。

 Roselletti氏らはまず、C. albicans感染およびコロニー形成が認められた女性(感染群)17例と非感染群12例の腟スワブを採取し、各種の炎症性サイトカインおよびC. albicansの亜鉛結合蛋白質PRA1の発現を評価した。その結果、感染群の17例中7例でPRA1の発現増加が認められ、PRA1発現とインターロイキン(IL)-8濃度との有意な正の相関が認められた(r=0.75、P=0.0005)。

 次に、PRA1遺伝子欠失マウスを作製し検討した結果、炎症性サイトカイン産生および好中球浸潤が抑制され、腟の炎症にはPRA1発現が必要であることが示唆された。

亜鉛がPRA1発現を抑制、VVC患者6例中5例で再発予防

 VVCモデルマウスによる検討では、硫酸亜鉛溶液の腟内投与によりPRA1発現が2.6分の1に減少し(P<0.005)、炎症性サイトカインであるIL-1β(P<0.005)およびCxCL-2(P<0.05)の産生、好中球浸潤(P<0.005)が有意に抑制された。

 さらに、亜鉛の効果をヒトを対象とした小規模パイロット試験で評価した。同試験では、直近12カ月間に3回以上の腟感染症(細菌性腟症、VVC)の再発が認められた女性10例を登録し、亜鉛含有ジェルによる治療を行った(最初の2週間は毎夜、以降は週2回の腟内自己投与)。その結果、再発性VVCの6例中5例(83%)において、3カ月の試験期間中の再発が認められなかった(P<0.0005)。

 以上の結果から、Roselletti氏らは「VVCにおける腟の炎症は、少なくとも部分的にはPRA1によって引き起こされ、PRA1発現を抑制する亜鉛を含有する腟保湿ジェルがVVCの予防(特に再発予防)に有用である可能性が示された」と結論。「より大規模の臨床試験を行って今回の結果を確認する必要がある」と付言している。

(太田敦子)