能登半島地震で大きな被害を受けた石川県珠洲市の市立正院小学校の避難所で、小中学生らが壁新聞を作成している。「正院ひなん所新聞」のキャッチコピーは「ケセラセラ(なるようになる)」。新型コロナウイルスなど感染症の広がりで一時休刊したが、このほど活動を再開。携わった女子中学生は「先行きは分からないが、なるようになる。前を向いてほしい」と語った。
 同市は1日の地震で多くの建物が倒壊し、津波被害などに見舞われた。発生直後、正院小には住民ら約500人が避難。電気も水もない中、協力し合って乗り切るため、避難所での生活ルールなどを伝える壁新聞を作ることになった。
 避難していた子どもたちに協力を呼び掛けたところ、小中学生約10人が集まり、4日に第1号が完成。炊き出しでの注意事項やカイロ・紙パンツなどの物資の配布状況などをまとめた紙面が、正面玄関や階段付近など4カ所に掲示された。
 「キーワードに線を引いて分かりやすく書こう」「どんな言葉がいいかな」。子どもたちが試行錯誤しながら、カラーペンなどで模造紙に書き上げた新聞は好評で、80代の女性避難者は「子どもたちが書いてくれるのが楽しみ。読むと癒やされる」と話す。
 人気新聞が休刊したのは、日々張り出す紙面に「手の消毒をしよう!」「常にマスク」などの文言が多くなったころだ。新型コロナなどが正院小にも広がり、市内の小中学校が再開し始めたこともあって、8号で止まった。感染が落ち着き、22日に9号を発行したが、内容をアドバイスしている小町富士子さん(68)は「子どもたちも疲れているだろうし無理はさせない。作る方も読む方も楽しくできれば」と話す。
 9号から加わったキャッチコピー「ケセラセラ」は人気バンド「Mrs.GREEN APPLE」の曲にちなんだものだ。紙面に書き込まれた歌詞「ここを乗り越えたら楽になるしかない」には緑色のペンでアンダーラインが引いてある。「新聞を読む避難所の人たちの力になれば」。10号を作成した女子生徒はそう語り、前を向いた。 (C)時事通信社