汎発性膿疱性乾癬は指定難病の1つであり、2021年度の特定医療費受給証所持者数は約2,000人と報告されている。好発年齢は小児期および30歳代で、発熱と皮膚の潮紅、無菌性膿疱の多発を主徴とし、再発と寛解を繰り返すケースが多い。治療の第一選択薬はエトレチナートやシクロスポリンで、近年では生物学的製剤も使用されるようになったが、効果的な治療法は確立していないのが現状である。名古屋大学病院皮膚科の吉川剛典氏らは、汎発性膿疱性乾癬患者から採取したDNAを用いた網羅的遺伝子バリアント解析から、同患者集団ではNEFV遺伝子変異を有する頻度が高いことを発見。新たな治療標的経路になりうるとJ Am Acad Dermatol2023年12月19日オンライン版)に発表した。

同じ自己炎症性疾患である家族性地中海熱に注目

 汎発性膿疱性乾癬の疾患関連遺伝子としては、2011年にIL36RNが報告されて以降、計6種類(IL36RNCARD14AP1S3SERPINA3MPOBTN3A3)が報告され、病態解明が徐々に進んでいる。一方で、これらの遺伝子にバリアントを持たない汎発性膿疱性乾癬患者も多く、さらなる関連遺伝子が模索されてきた。

 吉川氏らは、汎発性膿疱性乾癬と同じ自己炎症性疾患である家族性地中海熱の関連遺伝子MEFVに注目した。MEFVはパイリンインフラマソームの構成蛋白質であるパイリンをコードしている。家族性地中海熱では、MEFVにバリアントがあることでパイリンインフラマソーム関連の炎症が異常亢進し、さまざまな組織への好中球の遊走を惹起すると考えられている。

2つのMEFV遺伝子バリアントを持つ頻度が高いことが判明

 吉川氏らは、汎発性膿疱性乾癬患者24例(日本人)からDNAを採取し、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子バリアント解析を実施。MEFVバリアントを有する頻度を一般人における頻度と比較した。その結果、24例中5例(20.8%)にp.Arg202Glnが認められた(オッズ比∞、95%CI 2.00〜∞、P=0.004)。また有意差はなかったものの、p.Ser503Cysを持つ頻度(12.5%)が比較的高かった(同4.95、0.74〜40.95、P=0.091)()。

図.一般人と汎発性膿疱性乾癬患者におけるMEFV遺伝子バリアントの頻度

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(名古屋大学プレスリリースより)

 さらに、その他の無菌性膿疱を形成する膿疱性皮膚疾患患者10例(急性汎発性発疹性膿疱症、稽留性肢端性皮膚炎など)を加えた34例で行った同様の解析においても、上述の2つのMEFVバリアントを持つ頻度が高いことが判明した。

 以上から同氏らは「MEFVバリアントを有する汎発性膿疱性乾癬患者は、パイリンインフラマソーム関連の炎症経路の異常と、その結果としてのインターロイキン(IL)-1βやIL-18の産生増加などの発症メカニズムを呈する可能性が示された。MEFVバリアントを持つ汎発性膿疱性乾癬患者では、同バリアントが関与するパイリンインフラマソーム関連の炎症経路を標的とした抗炎症療法の有効性が期待される」と展望している。

(編集部)