中国・University of Traditional Chinese MedicineのLinli Zhang氏らは、慢性腎臓病(CKD)を対象としたSGLT2阻害薬に関するランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとメタ解析、さらにネットワークメタ解析(NMA)を実施。その結果、「SGLT2阻害薬はCKD患者の血清尿酸値を有意に下げ、有害事象発生率はプラセボ群と同等だった。SGLT2阻害薬の中では、ダパグリフロジン10mgの血清尿酸値低下効果が最も強い可能性がある」とBMJ Open Diab Res Care(2024; 12: e003836)に報告した。

付加的ベネフィットとしての尿酸値低下作用の検証

 SGLT2阻害薬には糖尿病治療薬としての効果に加え、さまざまな付加的ベネフィットが報告されており、血清尿酸値低下作用もその1つである(関連記事「SGLT2阻害薬で進行CKDの尿酸排泄が促進」)。

 今回Zhang氏らは、EMBASE、PubMed、Scopus、Web of Scienceを検索し、CKD患者を対象としたRCTを抽出。①SGLT2阻害薬は本当にCKD患者の血清尿酸値を下げるか、②血清尿酸値低下作用が最も強いのはどの薬剤か、③至適用量はどのくらいか、④SGLT2阻害薬による有害事象発現はプラセボより多いか―などのリサーチクエスチョンに関して解析を行った。

血清尿酸値は有意に低下、有害事象は差なし

 最終的に8報・9,290例を解析対象とし、用いられたSGLT2阻害薬はダパグリフロジン(5mg、10mg)、イプラグリフロジン(50mg)、カナグリフロジン(100mg、300mg)、エンパグリフロジン(10mg、25mg)、トホグリフロジン(20mg)、sotagliflozin(200mg、400mg)の6剤、試験期間は12~206週間だった。

 ペアワイズメタアナリシスの結果、プラセボ群に比べSGLT2阻害薬群で血清尿酸値が有意に低下することが示された〔標準化平均差(SMD)-0.22、95%CI -0.42~-0.03、I2=71%、P<0.01。GRADEシステムによるエビデンスの確実性はlow〕。

 次に、ベースラインの推算糸球体濾過量(eGFR)に基づくCKDのステージ別のサブグループ解析を行ったところ、SGLT2阻害薬はCKDステージ1~2群で血清尿酸値を有意に低下させたが、CKDステージ3~4群では有意な効果は見られなかった。

 有害事象の発生率は両群とも87.6%だった〔リスク比(RR)0.99、95%CI 0.97~1.00、P=0.147、エビデンスの確実性=high〕。

ダパグリフロジン10mgが尿酸値低下に最も有効

 次にNMAで薬剤/用量別の血清尿酸値低下効果を分析したところ、NMAにおける順位付けの指標であるSUCRA(surface under the cumulative ranking)の上位5つ(0%が有効性最大、100%が最小)は、ダパグリフロジン10mg(SUCRA 18.11%)、ダパグリフロジン5mg(同31.29%)、イプラグリフロジン50mg(同31.54%)、トホグリフロジン20mg(同44.56%)、エンパグリフロジン(同52.30%)となった。

 研究の強みとしてZhang氏らは、厳しい適格基準を満たしたRCTのみを対象とし、バイアス評価にCochrane risk of bias tool 2を用いた点を指摘。一方、血清尿酸値の変化は各試験の主要評価項目ではなかったこと、高尿酸血症治療薬や痛風治療薬の使用の有無を考慮しなかったため、併用薬の影響は明らかでないこと―などを研究の限界として挙げている。

 以上の結果を踏まえ同氏らは「SGLT2阻害薬はCKD患者の血清尿酸値を下げる有望な治療選択肢となる可能性がある。ただし、研究の限界もあり、エビデンスのさらなる検証が必要である」と結んでいる。

木本 治