温泉は健康増進や疾患治療などさまざまな目的で利用されているが、療養泉(泉質)が健康人にどのような影響を及ぼすかは十分に検討されていない。九州大学大学院工学研究院都市システム学講座の武田美都里氏らは腸内細菌に着目し、健康人がさまざまな泉質の温泉に入浴した前後の腸内細菌叢の変化を検討。炭酸水素塩泉に7日間連続で入浴すると、ビフィズス菌の一種であるBifidobacterium bifidumが有意に増加するなど、泉質ごとに腸内細菌叢に異なる影響を及ぼすことを明らかにしたとSci Rep(2024; 14: 2316)に発表した(関連記事:「温泉入浴に疾病予防は期待できるか」)。

5つの異なる泉質への入浴で腸内細菌叢はどうなるか

 武田氏らは、2021年6月~22年7月に九州在住で慢性疾患がない健康人127例(男性75例、女性52例、年齢18~65歳)を対象に、大分県別府市の5つの異なる泉質の温泉(単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫黄泉、硫酸塩泉)に7日間連続で20分以上入浴し、通常の食生活を行ってもらった。

 7日間の入浴前後の便検体を収集し、腸内細菌の変化を16SrRNAアンプリコンシーケンシングにより測定し解析した。なお、硫酸塩泉は参加者が3例と少数であったため解析から除外した。

炭酸水素塩泉への入浴でB. bifidumが3%増加

 解析の結果、7日間の入浴後、7種類の腸内細菌に変化が見られた。内訳は、単純泉ではParabacteroides属およびOscillibacter属(いずれもP<0.05)が、炭酸水塩泉ではB. bifidum(P<0.01)、Oscillibacter属Ruminococcus属が、硫黄泉ではRuminococcus 2属およびAlistripes属(全てP<0.05)が有意に増加していた。

 Oscillibacter属は単純泉と炭酸水素塩泉の共通株で、残りの5種類の菌はそれぞれ固有のものだった。

 腸内細菌の増加率が最も大きかったのはB. bifidumで、炭酸水素塩泉への入浴後に2.796%増加した。その他、Alistripes属は硫黄泉で1.486%、Ruminococcus属は炭酸水素塩泉で1.286%、Ruminococcus 2属は硫黄泉で0.866%、Parabacteroides属は単純泉で0.701%、Oscillibaterは炭酸水素塩泉で0.305%、単純泉で0.141%増加していた()。

図. 泉質別に見た入浴前後における腸内細菌の変化

52046_fig01.jpg

(九州大学プレスリリースより)

 武田氏らは「異なる泉質への入浴が腸内細菌叢に及ぼす影響を解析した結果、泉質ごとに異なる腸内細菌叢の有意な増加が見られた」と結論。その上で、「温泉入浴が腸内細菌叢や健康に及ぼす影響はまだ十分に解明されていないため、今後さらなる研究が必要だ。現在、再現性の確認や対照群を用いた検討などを進めている」と付言している。

(渡邊由貴)