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女性ホルモンが関係
~死因第2位の心疾患~

 心筋梗塞など循環器病(心疾患)は男性に多いというイメージがある。しかし、女性も発症し、世界では女性の死因トップが心疾患とされる。日本でも第2位を占めており、決して「男性の病気」ではない。女性のための心疾患予防・啓発プロジェクト「Go Red For Women japan」が2月、始動した。活動開始に当たり開催された公開セミナーで、専門家は「心臓をはじめとする臓器の機能には女性ホルモンが関与している。このホルモンが減ると、心疾患を起こしやすくなる」と強調した。

女性のための循環器病予防・啓発プロジェクトが始動

女性のための循環器病予防・啓発プロジェクトが始動

 「Go Red For Women japan」は、2004年に米国で始まった啓発活動の日本版だ。日本での取り組み開始に尽力した瀧原圭子・大阪大学名誉教授によれば、「心臓病が女性の最大の死因であることを多くの人に知ってもらうこと」が当初の目的だったという。毎年2月の第1金曜日を「赤をまとう記念日」とし、運動のシンボルの赤いドレスを着用するイベントなどを実施している。

 ◇人生を左右するホルモン

 セミナーの講演で、女性のための統合ヘルスクリニック、イーク表参道(東京都)高尾美穂副院長は「男性と女性ではなりやすいけがや病気に差(性差)がある」と指摘した。

 男性は20代から40代にかけてコレステロール値が高くなる傾向が見られる。脂質異常症になると、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などを招く恐れがある。糖尿病や痛風も男性の方が多い病気だ。

 一方、女性では貧血が代表的な病気だ。生理を繰り返すことに伴うもので、肩が凝ったり、腰や関節が痛んだりすることも生活の質(QOL)を大きく低下させる。高尾副院長によれば、うつ病を含む心の病気も女性の方が多い、とされている。

 女性の生殖機能を担う卵巣の機能は、10~50歳の期間限定でタイムリミットがある。卵巣から分泌されるエストロゲン(卵巣ホルモン)は排卵と関係し、女性ホルモンとも呼ばれる。このホルモンがたくさん分泌された後に排卵する。プロスタグランジンは子宮の筋肉をぎゅっと収縮させる。下腹部や腰が痛かったり、痛みが強過ぎて吐き気を催したりするのが月経困難症だ。

 高尾副院長は「女性の人生はホルモンによって左右される」と話した。

「Go Red For Women Japan」の公開セミナー

「Go Red For Women Japan」の公開セミナー

 ◇兆候を知る

 坂東康子・三重大学大学院教授は女性の心臓と健康に関し、「女性の場合、最も多いのが『胸痛』だ」と指摘した。胸痛で救急搬送される人のうち約4割が女性だという。

 心臓の筋肉に血液を送る血管が冠動脈だ。坂東教授は「自動車に例えれば、冠動脈はエンジンオイルを送るパイプで、心筋はエンジンもしくは車そのものだ。冠動脈が詰まって起こるのが心筋梗塞で、女性は閉経後に増える」と説明した。

 心疾患の予防のためには兆候を知ることが大事だ。動悸(どうき)めまい、立ちくらみ、冷や汗などがいつ、どれくらいあったのか。そして、どれくらい続いたのかを把握しておく。特に、日常的に脈を測るようにしたい。手首で脈を取る場合、動脈に指を当てた指を押さえ過ぎないようにする。

 心臓がけいれんし、ポンプ機能を失った状態を心室細動という。自動体外式除細動器(AED)は、心臓に電気ショックを与えることで正常なリズムに戻す。坂東教授は「意識を失い倒れた人にAEDによる処置を施せば、命を救うことにつながる。ただ、着衣の胸を広げなければならず、相手が女性の場合だと男性はためらってしまう。女性が倒れていたのなら、やはり女性が手を差し伸べてほしい」と強調した。

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