2024年度診療報酬改定では、医療従事者の処遇改善に重点が置かれた。使途を賃上げに限定した加算を創設するほか、20年ぶりに初診料を引き上げる。現場に携わる幅広い職種の賃上げを通じて、人手不足解消につなげる狙いだ。患者にとっては窓口負担が増えるだけに、それに見合う医療サービスを提供できるか、処遇改善の実効性が問われる。
 一般企業の従業員らは春闘を通じて給与アップの恩恵を受けたが、診療報酬を基にやりくりする医療機関は賃上げに必要な原資を確保できず、物価高騰が続く中で対応が遅れた。このため、岸田文雄首相は日本医師会などの強い要請を踏まえ、対策を強化する考えを示していた。
 看護職員らの給与に回す原資として加算を創設するほか、賃上げ促進税制も活用。定期昇給分以外に、24年度は2.5%、25年度は2.0%のベースアップを目指す。初・再診料の引き上げによる増収も、40歳未満の勤務医や事務職員らの給与に充てられる。
 医療機関が加算を受けるには賃上げ計画の策定が必要で、給与増を担保する。一方で初・再診料の引き上げ分はコロナ禍を踏まえた感染症対策への充当も想定しており、賃上げにどれだけ寄与するか不透明な部分も残る。厚労省は医療機関への聞き取りなどで実態把握に努める方針だ。
 厚労省は、高齢者人口がピークを迎える40年に医療福祉分野の就業者数が96万人不足すると推計。4月からは医師の残業時間規制が強化されることもあり、持続可能な働き方への転換も急務だ。省幹部は「給与を上げないと現場は疲弊し、担い手は減る一方だ」と危機感を示しており、診療報酬改定の効果に期待する。 (C)時事通信社