イタリア・IRCCS Humanitas Research Hospital/Humanitas UniversityのMario Valenti氏らは、中等症~重症の尋常性乾癬の難治部位(頭皮、掌蹠、爪、生殖器)病変を有する患者120例を対象に、インターロイキン(IL)-17A阻害薬イキセキズマブの有効性を評価する後ろ向き多施設研究を実施。その結果、1年間のイキセキズマブ投与後にこれらの難治部位病変を有する乾癬患者の85~96%で皮疹が消失・ほぼ消失したとJ Dermatol(2024年1月31日オンライン版)に発表した。
頭皮96%、掌蹠95.6%、生殖器95.2%、爪85%で皮疹消失
対象は、部位別の医師による総合評価(Physician's Global Assessment;PGA)スコアが3以上(中等症~重症)の尋常性乾癬の病変を少なくとも1カ所の難治部位(頭皮、掌蹠、爪、生殖器)に有し、52週間以上にわたりイキセキズマブによる治療を受けた患者120例。イタリアの3カ所の皮膚科医療施設から患者データを後ろ向きに収集した結果、平均年齢は49.01歳、男性が65.8%で、平均罹病期間は19.01年、乾癬性関節炎の併発が18.3%、生物学的製剤の使用歴ありが24.2%だった。病変部位の内訳は、頭皮病変が99例、掌蹠病変が37例、生殖器病変が26例、爪病変が24例だった。
主要評価項目とした、イキセキズマブ投与開始後52週の時点で部位別PGAスコア0/1(皮疹の消失/ほぼ消失)を達成した患者の割合は、頭皮病変群で96%、掌蹠病変群で95.6%、生殖器病変群で95.2%、爪病変群で85%だった。
いずれの病変群でも部位別PGAスコアの平均値は研究期間中に改善し、ベースラインから52週までの変化は頭皮病変群で3.43→0.15、掌蹠病変群で3.32→0.37、生殖器病変群で3.27→0.19、爪病変群で3.23→0.58だった。また、全体での乾癬重症度指標(PASI)スコアの平均値は、ベースラインの12.48(標準偏差7.81)から52週時点で0.38(同1.39)に低下した。
重篤な有害事象、有害事象による投与中止なし
イキセキズマブの安全性プロファイルは極めて良好で、研究期間中に重篤な有害事象の発現および有害事象による投与中止はなかった。
これまでに、難治部位の尋常性乾癬に対するイキセキズマブの有効性は、頭皮病変を対象にした第Ⅲ相臨床試験UNCOVER-1~3(J Dermatolog Treat 2017; 28: 282-287)、生殖器病変を対象にした第Ⅲ相臨床試験IXORA-Q(Acta Derm Venereol 2020; 100: adv00006)、爪病変を対象にしたネットワークメタ解析(J Dermatolog Treat 2022; 33: 1652-1660)などで示されていた。
Valenti氏らは「これらのデータで示されていたイキセキズマブの有効性が、今回のリアルワールドの研究で裏付けられた。イキセキズマブは難治部位病変を有する尋常性乾癬の患者に対する第一選択の生物学的製剤であると考えられる」と結論している。
(太田敦子)