京都大iPS細胞研究所の研究グループが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した腎臓の一部のオルガノイド(ミニ臓器)を使って、遺伝性の難病「多発性のう胞腎」の治療薬候補となる成分を特定した。研究成果は昨年12月、米科学誌「セル・リポーツ」に掲載。京大発のスタートアップ(新興企業)が治験を開始している。
 多発性のう胞腎は、遺伝子の異常により腎臓内に水がたまった袋が多数できる難病で、進行すると腎機能が低下して人工透析や腎臓移植が必要となる。
 原因となる遺伝子の違いによって2種類あり、多くを占める常染色体顕性(ADPKD)の国内患者数は推定3万人。根本的な治療薬はなく、進行を遅らせる薬はあるものの、多尿などの副作用があるという。
 研究グループはゲノム編集でADPKDの原因遺伝子を持つヒトのiPS細胞を作り、尿の排せつ路となる「集合管」のオルガノイドを作製。さまざまな薬剤を投与したところ、白血病の治療薬の一種が効くことが分かった。
 この薬剤をADPKDを発症させたマウスに注射すると、のう胞の増加が抑えられたという。
 研究グループの長船健二教授は「オルガノイドの有用性を示すことができた。他の臓器でも治療薬候補発見のきっかけになることを期待している」と話している。 (C)時事通信社