治療・予防

腎機能が低下する難病
常染色体優性多発性のう胞腎

 常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)は、遺伝子の異常により、腎臓に液体が詰まった袋(のう胞)がたくさんできて、腎臓が大きくなり、その働きが徐々に低下していく遺伝性の難病である。杏林大学医学部(東京都三鷹市)遺伝性腎疾患研究講座の東原英二特任教授は「両親のどちらかが罹患(りかん)していると、2分の1の確率で子どもに遺伝します。特に小児や若年者で高血圧がある場合、病状の進行が早いため、注意が必要です」と警鐘を鳴らす。

常染色体優性多発性のう胞腎が進行すると表れる症状

 ▽症状悪化の抑制が要に

 ADPKDは、「PKD1」もしくは「PKD2」という遺伝子の一部が壊れていたり欠けていたりする(変異する)と発症する病気だ。国内の推計患者数は約2万9000人。

 30~40歳代まではほとんど症状が表れないことが多いが、のう胞が大きくなるにつれて、脇腹や背中の圧迫感や痛み、腹部の膨満感、食欲低下、血尿などが見られるのが特徴だ。加齢とともにのう胞が両腎に増加し、腎機能が低下し、70歳までに約半数が末期腎不全になるという。

 家族にADPKDがある場合、超音波検査で両方の腎臓にのう胞が各3個以上、CTやMRIなどの画像検査で各5個以上見つかれば、この病気と診断される。

 東原特任教授は「のう胞の増大によって腎臓が大きくなりますが、腎臓の増大速度の速い患者では、腎機能は速く低下することが最近分かってきました。早期の段階(若い時期)からトルバプタンという薬による治療が望ましく、また高血圧を合併すると腎機能の悪化を早めるため、十分に血圧を下げることが望ましい」と話す。

 ▽初の治療薬トルバプタン

 高血圧の治療法としては、血圧を下げるACE阻害薬やARBという種類の降圧薬を服用する。だが、腎機能がさらに低下すると、人工透析や腎移植に移行することになる。

 一方、頭蓋内出血や感染症などの合併症にも注意が必要だ。東原特任教授は「特にのう胞に細菌がすみ着くと、感染を繰り返してしまうため、感染した場合には抗菌薬で治療を行うことが重要です」と話す。従来は、ADPKDに対する治療薬はなかったが、2014年にトルバプタンという薬が使えるようになった。のう胞の増大や腎機能の低下を抑え、病気の進行を防ぐ効果が期待されている。

 東原特任教授は「この薬は全ての患者さんに使えるわけではありません。また、多尿や夜間頻尿、肝機能障害などの副作用が表れるため注意が必要ですが、月に1回の血液検査で治療継続は十分可能です」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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