小林製薬の紅麹(べにこうじ)を含んだサプリメントにより健康被害が拡大している問題で、同社の緩慢な対応に批判が強まっている。医師の報告を受けてから製品の自主回収と使用中止の呼び掛けまで約2カ月かかっており、事態悪化を招いた恐れがある。
 同社によると、医師から健康被害が疑われる症例の報告を受けたのは1月15日で、回収と使用中止の発表は今月22日だった。小林章浩社長は29日の記者会見で「もう少し早く公表できれば被害を防げたとすれば、言葉がない」と語った。
 小林氏は公表の遅れを謝罪した一方、「原因が特定できておらず、情報が不十分で回収の判断には至らなかった」と釈明した。社内指針に沿った対応と強調したが、内向きで消費者軽視との批判は免れない。
 政府はこの問題を厳しく見ており、林芳正官房長官は26日の会見で、同社の対応を「誠に遺憾」と非難した。28日の株主総会に出席した株主からも「後手に回っている」などの声が上がった。
 回収発表以降、29日までに5人が死亡し、入院者は114人に上った。医薬メーカー担当者は「発表や官庁への報告遅れはあり得ない」と首をかしげる。機能性表示食品について、消費者庁の指針は「健康被害の情報を収集し、行政機関への報告を行う体制を整備することが適当」とするにとどまっており、制度見直しも急務だ。 (C)時事通信社