新年度に入る4月1日から、トラックなどの運転手、建設業、医師に対し、残業時間の上限規制の適用が始まる。働き方改革のためだが、人手不足が深刻化する「2024年問題」への懸念が伴う。食品などでは値上げが続き、24年度も家計は負担増に直面しそうだ。
 残業時間の規制は改正労働基準法に基づく。自動車の運転業務は年960時間、建設業は720時間が上限となる。医師は、地域医療維持などの理由があれば最大1860時間。現場の人繰りが苦しくなり、サービス維持が困難になる恐れがある。物流では、30年に荷物の34%が運べなくなるとの試算もある。
 物流を担う配達員の待遇改善に向け、ヤマト運輸と佐川急便は4月1日から宅配便を値上げする。燃料費の高騰も理由で、上げ幅は平均でそれぞれ2%と7%程度。
 タクシーの運転手不足に対応する規制緩和として、政府は一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶ「ライドシェア」を4月から一部解禁する。特定の地域・時間帯に限り、東京などで順次運行が始まる見通しだ。
 原材料費や物流費の上昇を食品価格に転嫁する動きも続く。帝国データバンクによると、4月の値上げは2800品目を超える。ハムなど肉製品や調味料の値上げが目立つ。
 再生可能エネルギー普及のため電気料金に上乗せされる賦課金も、4月使用分から上がる。24年度の負担額は、標準家庭(月間使用量400キロワット時)で約1万円増える。
 医療・年金制度の見直しもある。物価や賃金の上昇を踏まえ、年金支給額は前年度比2.7%増加する。厚生年金の場合、夫婦2人世帯で月額6001円アップとなる。ただ、年金財政安定のため給付を抑制する「マクロ経済スライド」も同時に発動。年金の伸びは物価の上昇に追い付かず、実質では目減りとなる。
 国民健康保険の保険料の年間上限は、現行の104万円から2万円増えて106万円に。所得の高い75歳以上の後期高齢者が支払う医療保険料は引き上げとなる。対象は、年金収入が年211万円を超える約540万人。年収400万円なら年1万4000円の負担増となる。
 物価高に負けない賃上げが焦点の24年春闘は、今も中小企業で労使交渉が続く。既に妥結した企業の賃上げ率は、3月21日時点の連合の集計で5.25%。実質賃金が「年内にプラス転換する可能性は一段と高まった」(大和総研)と期待される中、家計の購買力が回復するかどうかが注目される。 (C)時事通信社