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〔提供:(公社)大阪パビリオン〕

 開催まで1年を切った大阪・関西万博では、医療・ヘルスケアに関するパビリオンの出展も計画されている。4月24日、「大阪ヘルスケアパビリオン」の特徴を紹介する「2025 大阪・関西万博に向けた未来社会デザインシンポジウム2024」が開催され、健康長寿社会の実現に関するパネルディスカッション、出展予定のスタートアップ企業による事業説明などが行われた。シンポジウムを主催した日本抗加齢協会理事長の堀江重郎氏は「万博開催まであと1年に迫る中、総合プロデューサーを務める森下竜一氏を中心に、大阪ヘルスケアパビリオンは着々と準備が進んでいる」と報告した。

建物は日本館に次ぐ規模に

 シンポジウムは、堀江氏の開会挨拶に始まり、大阪ヘルスケアパビリオンに関連する講演2題、パネルディスカッション、横山英幸大阪市長の挨拶、出展企業3社の事業紹介の後、吉村洋文大阪府知事の挨拶で締めくくられた。

 大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」。一人一人が自らの望む生き方を掲げ、それぞれの可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、こうした生き方を支える持続可能な社会を国際社会が共創していくことを推し進めるというメッセージが込められた。

 大阪ヘルスケアパビリオンは、鳥の巣をイメージした天井から光が入り込む幻想的なデザインで、日本政府館に次いで2番目に大きな建物になるという。企業による展示ゾーンの他、先端技術を用いたクロスリアリティ(XR)シアターや水盤上のステージ、地球をイメージした大型の球体オブジェや水槽などが設置される予定だ。

「PHRポッド」で25年後の自分に対面

 公益社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン副代表理事の西澤良記氏は、出展テーマを「REBORN(リボーン)」と紹介。「人は生まれ変わる、新たな一歩を踏み出す、という意味が込められている」と説明した。

 メイン展示は「REBORN体験ルート」。来場者は「Personal Health Record(PHR)ポッド」に入り、非接触で心血管、骨、筋骨格、肌、髪、脳認知、視覚、歯のデータを測定すると、このデータを用いて作成された25年後の自分のアバターに対面できる。「現代を生きる自分自身の健康情報から生成される未来の自分が、さまざまな未来のヘルスケアや都市生活を通して生まれ変わる様子を体験してほしい」と述べた。

 出展企業のニプロ株式会社代表取締役社長の佐野嘉彦氏は、間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療で下半身麻痺を克服した患者を紹介し、再生医療の可能性について語った。 

未来の先進医療体験に期待

 パネルディスカッションではモデレータとして大阪大学大学院臨床遺伝子治療学寄附講座教授の森下竜一氏、パネラーとして大阪ヘルスケアパビリオンのディレクターである山田秀和氏と冨田哲也氏、森永乳業研究本部基礎研究所プロバイオティクス研究室室長の岩淵紀介氏が登壇。超高齢化が進む日本において健康長寿を達成するための社会と個人の取り組みや、協賛企業による「ミライのヘルスケア」展示で体験できる最新技術に関し、議論を交わした(写真1)。

写真1. ディスカッションを交わす3者(左)と森下竜一氏(右)

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 スタートアップ企業のプレゼンテーションでは株式会社イヴケア代表取締役社長の五十棲計氏が毛髪を用いたストレス測定システムを、株式会社xCure代表取締役の新嶋祐一朗氏は仮想現実(VR)ゴーグルを用いた痛みや不安のコントロール技術を、株式会社アルガルバイオ代表取締役社長の木村周氏は藻類の研究開発を紹介した。

帰るときには新たな自分に

 最後に、吉村洋文大阪府知事が登壇した。この日は大阪ヘルスケアパビリオンを視察してきたといい、「パビリオンは今年10月に完成予定で、外観はほとんどでき上がっている。このパビリオンを出るときに、入ったときとは違う自分に出会えるような体験を提供すべく努めている。社会課題と向き合い、いのち輝く未来社会とは何か、全員で問いながら進んでいきたい」と万博の成功に向けて意気込みを新たにした。

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(大阪市役所前で撮影)

(平吉里奈)