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新潟県上越市の介護事業所において「生成AI活用検証」 を実施し、56%の業務効率化に成功

東日本電信電話株式会社
~NTTが開発した超小型版LLMを活用し自動化領域を拡大~

 上越5e協議会※1(会長:渡邉 隆)と株式会社 丸互(本社:新潟県上越市、代表取締役社長:前川 秀樹、以下「丸互」)と東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷直樹、以下「NTT東日本」)は、AIやIT技術の活用による介護事業における人手不足の解消に向けて、新潟県上越市の複数の介護事業所にて、2024年8月から2025年3月までの間、tsuzumi※2を活用し業務効率化を目的とした実証事業を実施し、業務効率を56%向上させることに成功しました。


※1 上越 5e 協議会(https://joetsu5e.jp/)とは、上越市の産・官・学・金・民の協力連携のもとで IT を活用することにより、ビジネス、スポーツ、教育、観光、健康など様々な分野が抱える問題の解決を図り、地域活性化や生活の質向上を目指す団体です。
※2 tsuzumiとは、NTTが開発した軽量でありながら世界トップレベルの日本語処理性能を持つ大規模言語モデル(LLM)です。NTTグループでは、「tsuzumi」を用いた商用サービスを2024年3月に開始しました。https://www.rd.ntt/research/LLM_tsuzumi.html

1.取り組みの背景・目的
 医療・介護・福祉分野においては、人手不足が深刻な課題となっています。特に高齢者の増加と生産年齢人口の減少がこの問題を引き起こしています。厚生労働省の需給推計※3によれば、団塊の世代が75 歳以上になる2025 年の介護人材の需要が約253万人見込まれるのに対して、供給は約215.2 万人とされています。これについては、様々な人材確保の施策が進められていますが、AI やIT 技術の活用による人手不足の解消に向けた取り組みが強く求められています。昨今、ChatGPT をはじめとした生成 AI の発展はめざましく、様々な業界で検証/導入が進められ、介護の現場でも人手不足解消やサービスの質の向上につながることが期待されます。一方で、生成AIに正しい結果を求めるには大量の学習データが必要となり、個人情報漏洩対策などのリスク管理が重要となります。
 これらを背景に、本実証では、NTTの研究所が保有する 40 年以上に及ぶ自然言語処理研究の蓄積、世界トップレベルのAI分野の研究力を活かし、GPUを使わずにCPUの処理のみで動作を実現しながらトップレベルの日本語処理性能を持つ超小型版「tsuzumi」を活用し、専門性の高い介護用語に対しても適切な文脈で出力する介護記録の作成支援のモデル構築をめざしました。また、軽量なサーバで動作できる特徴を生かし、従来であれば大量のGPUを保有するパブリッククラウドのサーバ群を活用することに対して、オンプレミス/プライベートクラウド上にCPUのサーバを設置することにより機微な情報をセキュアに扱える環境もめざしました。

※3 厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html

2.実証概要
 本実証では、介護記録への記載業務を対象に実施しました。介護記録とは、介護士が介護サービスを受ける利用者の日々の状態や問題点を記録する文書です。介護記録によって介護士同士の情報共有や介護サービスの質の向上に効果があると言われている一方で、日々の介護サービスを受ける利用者のケアをしながらパソコンのキーボードから手入力で介護システムへ介護記録を登録することは業務負担が大きいとも言われています。今回実証を行った介護事業者においては、利用者1人あたり1日の介護記録の登録に約40分かかっていました。そこで、パソコンのキーボードから手入力をする代わりに、スマートデバイスを模擬したノートパソコンから介護士が音声により報告内容を入力し、tsuzumiを通じて音声認識した言葉を適切に文字化する「校正」と、音声認識した言葉を介護記録の適切な項目に仕分ける「仕分け」を行い、介護記録(例:食事、排泄、入浴など)として自動記録する実証を行いました。また、実証構成としては、介護システムの提供を行っている丸互の事業所にtsuzumiのサーバを設置し、NTT東日本のフレッツ・VPNプライオ回線を経由して遠隔にある介護事業所に接続し実証を行いました。(図1、2)
 本実証では、2つの介護事業者の複数の介護士を対象として「体温や血圧などのバイタル」「入浴」「排泄」「食事」「レクやリハビリ」「その他の記録すべきケース」の記録業務を対象にランダムに実施し、以下の2つの観点で評価を行いました。
 1. 業務効率化
  従来の方法であるパソコンのキーボードから手入力した場合にかかる時間と、音声入力用PCで音声から入力した場合にかかる時間を比較し、介護士1人あたり1日に記録する時間がどの程度削減できるかを評価
 2. tsuzumiの正答率
  音声入力に対して、「校正」と「仕分け」がそれぞれ理解できる内容として出力されていたら正解、それ以外は誤認識として正答率を評価
 本実証の結果、1.業務効率化は56%(1人あたりの1日の介護記録の登録にかかっていた時間を、39分から17分へ削減)、2.tsuzumiの正答率は78%となりました。



図1.実証構成


介護事業者A

介護事業者B

図2.実証の様子

3.本実証の役割分担
上越5e協議会:全体のコーディネート
丸互:実証用のハードウェアの提供および、業務効率に関する情報の収集・分析
NTT東日本:実証用のtsuzumiの提供および、生成AIの正答率に関する情報の収集・分析

4.今後の展開について
 丸互では、市中の介護システムとの連携のためのAPIを開発し、介護システムベンダとの共創とその先の商用化をめざし取り組みます。NTT東日本では、誤認識となった出力部分の分析を行い正答率の向上に向けてtsuzumiの改善の取り組みを行ってまいります。将来的にはスマートデバイス化・フリーハンドによる記録をめざします。

5.本件に関するお問い合わせ先
上越5e協議会事務局(株式会社 丸互 内)
info@joetsu5e.jp

東日本電信電話株式会社
sangaku@east.ntt.co.jp
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