足の悩み、一挙解決

第14回 足だけで歩くのはもったいない
~ウオーキングは量より質~ 足のクリニック表参道院長 桑原靖

 ◇全身を使って歩く

 足だけで歩こうとせずに、全身を使って歩くようにします。肘を軽く曲げて前後に真っすぐ振り、骨盤を使って腰から進むように歩きます。

 お尻を左右に振って歩くモデル歩きではなく、どちらかというと、競歩の選手に近い感じです。ただし、そこまでクネクネ歩くのではなく、あくまで骨盤が前後に動き、それに足がついてくるイメージです。

 足を出すときに骨盤から動かして、足がウエストの辺りから始まっているようなイメージで歩くようにします。

 すると、ウエストも捻じれて、腹斜筋も鍛えられるので、緩んだお腹回りが引き締まります。背中にリュックサックを背負っていたら、背中がシュッシュとこすれるくらい上半身も自然に動きます。

 ◇まずはやってみよう

 例えば、右足を前に出すときは、まず右の骨盤を前に出すと同時に、左の肩を前に出して、左足のアキレス腱が伸ばされているのを感じながら、右足のかかとに体重を移していきます。

 このとき、左肩を前に出し過ぎてしまうと、ウエストのねじれが効率よく1歩に反映されないので、その分、右の骨盤を前に出しながら距離を稼ぎます。

 右の骨盤を前に出すためには、右の股関節は外旋(外向きに回転)、左の股関節は内旋(内向きに回転)しなくてはならないので、股関節の柔軟性が必要となります。

 また、アキレス腱(けん)も柔軟性がないと、右足が地面に着く前に左足のかかとが早く浮いてきてしまい、踏み返し時間が長くなって左の指の付け根が痛くなったり、足底腱膜に負荷がかかったりします。

 速足で歩く必要はありません。初めはお腹回りやお尻、太ももの内側や後ろが痛くなってくるので、無理をせず、少しずつ実践していくとよいでしょう。

 足だけを使って歩くのではなく、全身を使えば、同じ距離を移動するにしても、足への負担は圧倒的に少なくて済みます。

 ◇歩く前にアキレス腱ストレッチ

 足は内股や、がに股にならないよう、できるだけ真っすぐ前に出すようにします。少し外側に開くのは構いませんが、10度くらいの角度に収めましょう。

 踏み出した足は、かかとから着地して重心を乗せます。足全体が地面に着くと、足首が前に倒れて、重心がかかとから足指全体に移動します。

 最後に足指の付け根で踏み返しますが、このとき、重心は親指と人差し指の間にかかるようにイメージします。

 アキレス腱が硬いと、足首を十分に前へ倒すことができず、歩幅が狭くなってしまいます。

 また、かかとが早く浮くときに、グッと足をひねって前に進もうとするため、回転の力が指の付け根にかかって、そこにタコやウオノメができやすくなります。

 歩く前にはアキレス腱のストレッチをしておくといいでしょう。

 ◇片足立ち、よろけては駄目

 骨盤を大きく動かすと、結果的にスムーズに足を踏み返せるようになり、蹴り出す力が大きくなるので、歩幅も大きくなります。

 1歩が大きくなると、片足に重心が乗っている時間が長くなるので、ある程度の筋力も必要です。片足立ちをしてみて、すぐによろけてしまうようだと、正しい歩き方はできません。

 片足で立ったときに、上げていない方の足がガクっと落ちる場合は、お尻の筋肉がなかったり、足のアーチが崩れて、足元が不安定になったりしている可能性が高いです。

 足のアーチが崩れたままでは、正しい姿勢を保つことも、正しい歩き方で歩くこともできません。

 全身を使って歩くためには、足のアーチを保ちながら、荷重をしっかりと移動させていくことが必要ですので、足にトラブルがある人はきちんとした靴を履き、足に合ったインソールを組み合わせ、これを補整します。

 正しい歩き方を身に着けると、足の健康が向上し、見た目も美しくなるので、ぜひ習得しましょう。

(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)


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