足の悩み、一挙解決
タコ、ウオノメも原因を究明して治療
専門の看護師によるフットケアも(足のクリニック表参道) 【PART2】第18回
【桑原靖院長】「足のクリニック」を訪れる患者さんのトラブルで男女共に多いのは、意外にもタコ・ウオノメです。大した問題ではないように思われがちですが、痛みの原因になり、歩き方にも影響します。足のクリニックでは、専門の看護師が、患者さんのフットケアを担当しています。フットケアというと、エステやネイルサロンで足や爪を美しくすることを思い浮かべるかもしれませんが、医療行為として行うフットケアでは、なぜタコやウオノメができるのか、原因を探って、チームで解決策を考えていきます。そこで今回は、看護師によるフットケアと、足のセルフケアに役立つグッズをご紹介します。
◇爪、タコ、ウオノメ
フットケアでは、タコやウオノメを刃物(コーンカッター、カミソリ)やグラインダー、やすりなどを使って取り除き、厚くなった爪や変形した爪に対してグラインダーを用いて処置し新しい爪がスムーズに生えてくる環境を整えます。
フットケアのデモンストレーションで爪の治療をする様子【時事通信社】
例えば、爪が分厚くなる「爪甲肥厚(そうこうひこう)」と爪が皮膚に食い込んで痛いという症状で受診した患者さんの場合、まず過剰に厚くなった爪の表面をグラインダーで削り取ります。これは、肥厚した爪を放置すると、さらに爪が厚くなり、その結果、爪下の組織を傷つけてしまうからです。
過剰な爪を薄く削ることで、新しい爪が真っすぐに伸びていくようになります。足の爪先をどこかにぶつけて、爪が浮いてしまったような場合は、新しい爪に生え変わるのを待っているより、不要になった浮いている爪を取り除いてしまった方が、健康な爪が早く生えてきます。
爪が食い込んで痛いのは、巻き爪ばかりではありません。爪の幅が横にわずかに広いだけでも、両脇の肉に食い込んで、痛みを生じさせます。爪の両脇を斜めにカットしたり、グラインダーで削ったりすることで圧迫感が取れて楽になります。また、ご要望があれば自費ではありますがワイヤによる処置も行っています。それでも解決しない場合は、余分な爪の爪母細胞(爪になる細胞)の一部を手術で除去する方法もあります。手術は医師が行いますが、ほんの10分程度の日帰り手術です。
◇原因にアプローチ
このように、看護師が行うフットケアでは、爪だけ、タコ、ウオノメだけを見るのではなく、その原因や増悪させる要因をあらゆる角度から観察し、介入(治療)します。その患者さんに糖尿病やリウマチなどの基礎疾患があるか、抗がん剤などの治療をしているかといった医学的(病態生理)視点はもちろん、履いている靴や歩き方、趣味や仕事などの生活様式、セルフケアに関することも含め、足トラブルの原因と増悪要因となっている全ての情報を総合してアセスメントを行い、その人に合わせた目標設定と介入方法を見いだします。
看護師の役割の一つに、疾病や障害の管理があります。このままの状態を放置することによって、生じること(不利益)を病態的に理解した上で、患者さんにはそのリスク伝え、どのように管理していくかを共に考え、実施できるケア方法(セルフケア)を提案しています。また、セルフケアの実施状況とその効果を継続的に確認し、適宜、修正しています。
ネイルサロンで行うケアは、利用される方のニーズに合わせ、ネイリストさんが症状緩和のためのケアを提供されていると思います。当クリニックが行っているフットケアは、症状緩和のための直接的なケアだけでなく、医学的な視点から足トラブルの原因、増悪要因を見いだし、患者さんが継続実践できるケアを提案・支援しながら最終的にはケアからの離脱を目指しています。また、症状が改善しない場合、当クリニックには医師のほかにも義肢装具士や理学療法士がおりますので、職種の枠を越えて相談できるという点も足のクリニックの強みです。
いつも同じ場所にタコができる、という場合、足の構造に問題があることの結果として、できている場合も少なくありません。「たかがタコ」とは思わず、なぜタコができるのか、その原因をはっきりさせるためにも、一度、医療機関を受診することをお勧めします。
◇爪は肌以上に保湿を
皮膚の乾燥は気になっても、爪の乾燥には気付かないという人が意外に多いようです。爪は爪母(爪の根部)で増殖した細胞が角化して、指先に向かって伸びていきます。皮膚と同様に角化する組織なので乾燥もします。特に足の爪は、手に比べて大きな外的刺激を受けますので、爪が薄い、割れやすい場合は、保湿ケアが必要です。
お風呂上りには、皮膚と同様にオイルなどで保湿するとよいでしょう。爪専用のものでなくても、ハンドクリームを爪の先までのばして入念に擦り込むだけでも構いません。かかとにクリームを塗るついでに足の爪も保湿しておけば簡単にケアできます。
◇テーピングで爪ケア
爪がなかなか先に伸びずに悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そのような方には、まず、きれいに爪を整えてから、指の盛り上がった部分にテープを貼って、爪が伸びていく道筋を邪魔しないように抑える方法が効果的です。
テーピングによる爪ケアの例【時事通信社】
テープの貼り方は、立った時の爪とその周囲の状態、活動量(営業でたくさん歩き回るとか、スポーツなどで激しい動きをするなど)を考慮して検討します。テープを貼る器用さも考慮して、毎日継続できる貼り方を提案しています。使用するテープは、伸縮性のないもので、肌に合ったものなら、何でも構いません。
◇巻き爪補正器具
自分でも装着可能な巻き爪補正器具が市販されています。巻き爪を専門に治療する埼玉医科大学病院形成外科の簗由一郎氏が、忙しい外来の中で、巻き爪の治療に時間がかかり過ぎること、自費診療のため患者さんの費用負担が大きいことなどから、自ら開発しました。
巻き爪専門のホームページでは、簗氏が自ら質問にも回答しています。短時間で装着でき、繰り返し使えるため、費用負担も少なく、医療機関に行かなくても自分でセルフケアが可能な点が大きなメリットと言えるでしょう。自分では装着できないという人は、取り扱い医療機関で装着してもらうことも可能です。
◇外反母趾ソックス
足のクリニックとの共同開発で、靴下の専門メーカーが「親指強化型五本指ソックス」を発売しています。親指の付け根の部分の圧力が高くなっており、親指を本来の位置に戻すようサポートしてくれます。普通の靴下では痛みが出てしまうという人でも、楽にはけることが多いようです。外反母趾(ぼし)の予防や、治療後の再発予防にもいいと思います。
五本指ソックスを足裏側から見た様子。親指の付け根部分が厚くなっているのが分かる【時事通信社】
◇「痛くない」が大前提
足のトラブルに対応したセルフケアグッズは、ドラッグストアなどでも容易に手に入ります。どれを買ったらよいのか迷うことも多いと思いますが、まずは使ってみて楽になるかどうかが重要です。ただし、痛いのに我慢して使い続けることだけはやめていただきたいと思います。
足のクリニック表参道のフットケア外来では、専門の看護師がケアをした上で、セルフケアの方法についても詳しくアドバイスしています。何をしてもよくならない足の悩みをお抱えの人は、ぜひ一度、フットケア外来にお越しください。(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)
全国から患者が殺到するクリニック
「足のクリニック表参道」院長。2004年埼玉医科大学医学部卒業。同大学病院形成外科で外来医長、フットケアの担当医として勤務。13年東京・表参道に日本では数少ない足専門クリニックを開業。専門医、専門メディカルスタッフによるチームで、足の総合的な治療とケアを行う。
日本下肢救済・足病学会評議員。著書に「元気足の作り方 ― 美と健康のためのセルフケア」(NHK出版)、「外反母趾もラクになる!『足アーチ』のつくり方」(セブン&アイ出版)など。
(2021/05/26 05:00)
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