医学部トップインタビュー
人間形成に重点
面倒見の良さが際立つ-金沢医科大学
◇研究しながら臨床
医療面で特に力を入れているのは再生医療、ゲノム医療、認知症の三つだという。
2016年に稼働した再生医療センターでは、樹状細胞を用いたがん免疫療法や、皮下脂肪組織幹細胞による膝関節等を行っている。ゲノム医療センターではさまざまな遺伝性疾患に対する診察、遺伝カウンセリング等を行う。18年からはがんに対する遺伝学的検査を開始した。認知症センターでは多科、多職種の連携によって認知症の早期発見や新たな治療法の研究に取り組む。
「こうした新しい分野への取り組みに魅力を感じて、研究しながら臨床もやっていこうという人にぜひ来てほしいですね」
神田学長は群馬県出身。身内に医療者はいないが、両親ともに病弱で、神田学長が母親のおなかにいるときに、父親の心臓病が発覚した。父親は、医師から「いつ死んでもおかしくない」と言われていたため、母親は妊娠中から美容師学校に通って免許をとったという。
◇運命を感じた
「浪人中に新設校である金沢医大が4月末に入学試験をするという新聞記事を見つけて、受けに行きました。不思議なことに、列車で向かう途中、『お前は金沢へ行って、そこで役に立つ人間になれ』という声が聞こえてきて、何か運命的なものを感じました」
これを天からの啓示と受け止めた神田学長は、困難に直面しても、「自分が貢献できるなら、こんなに幸せなことはない」と考え、行動してきたのだという。
医師になってからは、関連病院を13施設も転々とし、あらゆる診療科を経験した。「大変だったけど、そこでの経験があったから、僕は総合医として修練を積むことができた」と前向きに受け止めている。
医師生活で強く印象に残っているのは、全身に激痛が走り、ストレッチャーで運ばれてきた40代の女性患者を治療したときのこと。線維筋痛症と診断し、総合医として考えられる限りの治療を行った。
◇『人格の陶冶』を目指して
「まずは安心させて、入院してもらい、よく話を聞くと、いろんなストレスがかかっていることが分かった。家族の人も呼んで話をしたり、ペインクリニックに相談したりもしました」
治療に難渋することが多い疾患だが、数カ月の入院を経て劇的に回復した。「いまだに何かあると私がどこへ転勤しても、相談に来てくれます。あのとき、治療がうまくいったのは、あらゆる診療科を経験していたおかげ」と神田学長。
こうした経験を踏まえ、「自分の意に沿わないことがあっても、『自分は損をしている』と思うのではなく、どうやっていい方向にするかを考えなさいということです。そのことの積み重ねが、人格の陶冶につながっていく」と学生たちに語っている。
「医師になる前に、人格の陶冶を目指しなさい」とは、神田学長が一期生として入学したときに、当時の衆議院議員・益谷秀次氏が新入生に贈った言葉。現在の大学の理念「倫理に徹した人間性豊かな良医の育成」に受け継がれている。(中山あゆみ)
【金沢医科大学 沿革】
1970年 金沢医科大学設立準備委員会発足
72年 金沢医科大学開学、第一回入学宣誓式
74年 金沢医科大学病院開院
78年 医学部医学科第一回卒業証書授与式
82年 大学院医学研究科設置
83年 熱帯医学研究所開設、人類遺伝学研究所開設
89年 総合医学研究所開設
94年 厚生省から特定機能病院に承認
99年 生体肝移植第1号実施
2000年 電子カルテ全科実施
03年 病院新館竣工
05年 医学教育センター設置
09年 クリニカル・シミュレーションセンター開設
10年 スチューデントドクター医局開設
11年 金沢医科大学氷見市民病院移転新築
12年 金沢医科大学レジデントハウス竣工
13年 金沢医科大学氷見市民病院教育研修棟竣工
15年 手術支援ロボット「ダビンチ」最新モデル導入、再生医療センター竣工
16年 認知症センター、乳腺センター、女性総合医療ンセンター開設
17年 病院中央棟竣工
18年 ゲノム医療センター開設
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(2019/04/17 11:00)