医学トップの視座

人間形成に重点
面倒見の良さが際立つ-金沢医科大学

 金沢医科大学は北陸地方の医師不足解消のため、日本海側唯一の私立医科大学として1972年に創設された。大学がある石川県内灘町は、金沢市のすぐ隣にあり、日本海に面する自然に恵まれた環境だ。「医師になる前に人格の陶冶(とうや)を目指す」という設立当初の理念を守り、職員が学生一人ひとりに寄り添い、人間性豊かな良医の育成に力を注ぐ。
 一期生である神田享勉学長は「医師としてベストを尽くしても、患者が必ず助かるとは限らず、さまざまな困難がある。どんな状況に直面しても、しなやかに乗り越えられるような医師になってほしい」と話す。

インタビューに応える神田享勉学長

 ◇逆境をバネに

 東京医科大学の不正入試問題をきっかけに昨年、文部科学省が実施した医学部の入試に関する緊急調査の結果、全国で10校が不適切と指摘され、金沢医科大学もその中に含まれた。同窓生子女、北陸三県高校出身者などへの加点を行っていたためだ。

 「地元に残る学生を獲得しようとしたのですが、不公平と指摘され、9人の追加合格者を出しました。私学助成金も減額になり、つらい時期ですが、この波を乗り越えて成長するチャンスにしていきたい」と神田学長。

 地域医療に従事する学生を確保するために、多くの大学が「地域枠」を導入しているが、同じ県内にある金沢大学に県の助成金が交付されていることから、金沢医大は導入できない。このため、卒後5年間は地域に残ることを条件にしたAO入試と指定校推薦での学生確保を模索している。

 金沢医大の不正入試が明るみにでたのは、これが2度目。最初は神田学長が一期生として入学した直後のことだった。「せっかく入ったのに、大学がつぶれるんじゃないと危機感をもった時期もありました」

 当時も逆風にさらされたが、なんとか持ち直して、大学は存続した。こうした歴史をふまえて、「強風にあおられても倒れない強さとしなやかさを持った大学、レジリエンスで発展する大学を目指したい」と、神田学長は決意を新たにしている。

 ◇後期入試は倍率150倍

 金沢医大の後期入試は英語と数学の2教科で受験できるため、文系の大学卒業者にも入学のチャンスがある。結果として、さまざまなバックグラウンドを持った人が入学してくるという。「純粋培養ではなく、年齢も経験もバラバラな人がいることで他の学生にとっても多様性を認める訓練になる」と、神田学長はメリットを強調する。

 不正入試問題の影響で受験者数の減少が懸念されたが、後期入試は10人の定員に対し、1500人を超える受験希望者が殺到した。

 ◇学生を孤立させない

 学生の倫理観を育てるために、2年前からカリキュラムに「医療プロフェッショナリズム」を導入した。警察官、麻薬取締官など多様な職種の人たちに講義を依頼している。「医師である前に人間であれという考えに基づいて、気持ちを落ち着かせるマインドフルネスという講義も行っています」

 近年、メンタルヘルスの不調を訴える学生も増え、対策として先輩が後輩のメンターになるシステムもつくった。『ポレポレカフェ』と称して、昼休みや放課後に上級生が食堂の2階に常駐し、下級生の相談に乗っている。「孤立すると学業にも支障が出るので、何とかして孤立を防ぎたい」と神田学長が発案した。

 学習に遅れた学生へのフォローにも力を入れている。成績下位者20~30人を対象に、4年生では臨床実習開始前に共用試験の一環として行うCBTテスト対策、5年生には「医局預かり」と称し、希望する医局に出入りしてコミュニケーションのチャンスを与える。6年生では会議室などに学生を集めて補習を行う。漫画のタイガーマスクにちなんで「虎の穴」と名付けた。

 「どのプログラムも毎回参加すると着実に成績が上がり、下位から抜け出して卒業していく学生もいます」

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