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可愛い犬と一緒、手術も平気
「勤務犬」が病院で活躍

 「今の先端医療は効率と短時間で目に見える効果を追及する傾向が強い。本来の医療とは、同時に患者の安らぎや笑顔も同じように追い求めなければいけないのではないか。このためにモリスはこの大学病院に欠かせない存在だ」

 勤務犬の存在は、いわば医療機関の「ゆとり」と言えるだろう。

モリス(左)とミカ

 ◇職員が自宅で飼育

 同院が勤務犬による正規の動物介在療法を開始したのは、2015年4月。モリスの先代の「ミカ」を日本介助犬協会から貸与され、小児外科の医師と小児科病棟の看護師長がミカの管理役の「ハンドラー」を務め、看護師長の自宅で飼育した。

 勤務犬の活動の継続性や院内での連携の確保などを目指したもので、関係職員とその家族が協力する形で始まった。現在のモリスも、犬を愛する看護師2人が分担して自宅で飼育している。

 ミカの活動は小児病棟だけでなく、難産が予想されて入院する妊婦の多い産婦人科や、緩和ケアのニーズが多い腫瘍内科などに及んだ。活動開始から18年1月までに勤務犬としての活動は200件以上。そのほとんどで「情緒的安定」や「闘病意欲の向上」などの効果が認められた。ただ客観的評価が難しい分野なので、研究として効果を立証するのは難しい面があるという。

北川博昭聖マリアンナ医科大学病院長

 ◇小児がんの患者も笑顔に

 ミカの活動時間いっぱい、ミカを病床で抱きしめていた成人患者。長年手術を拒否していた小児患者が「ミカと一緒なら」と歩いて手術室に入っていった。抗がん剤治療による吐き気に苦しむ小児がんの子どもがミカと会い、笑顔を見せた。北川院長は当時を振り返って、その効果を強調する。

 ただ、嗅覚や聴覚が発達した犬にとって、病院は決して快適な環境とは言えないし、患者との接触によるストレスも無視はできない。週2日に活動を絞っているのもこのためだ。それでも、体調によっては、ハンドラーの判断で活動を中断したり、予定の一部を後日に延ばしたりするケースもある。

 「勤務犬用の専用控室はあるが、ミカはしょっちゅう院長室にやって来た。私が昼食を食べるのを見ながら、自分も食事をすることもあった。夏には食事の後、冷たいビニール生地のソファに寝転んで休憩していた」と、北川院長は目を細めた。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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