インタビュー

睡眠障害、伊藤洋医師に聞く(上)=大きな社会的損失

 目覚めがすっきりしない、しっかり寝たつもりでも疲れがとれない、日中眠くて集中できない―。睡眠に何らかの問題を抱えている人は5人に1人という。日中の眠気により作業能力や判断力の低下を引き起こし、社会的にも大きな損失をもたらす睡眠障害は、単なる寝不足では片付けられない問題だ。睡眠医療の現状について、東京慈恵医科大学葛飾医療センター院長で日本睡眠学会理事長でもある伊藤洋医師に聞いた。

  ◇治療対象は慢性不眠症

 ―ちゃんと寝たはずなのに、朝疲れが残っていたり、昼間ずっと眠かったりするのは病気なのでしょうか。

 伊藤 不眠症ではないかと思われます。不眠症は睡眠障害の一つで、2014年に改訂された国際的な診断基準(米国睡眠医学会ICSD-3)があります。不眠症の症状は発症原因にかかわらず、「寝付きが悪い(入眠困難)」、「夜中に目が覚める(中途覚醒)」、「早朝に目が覚める(早朝覚醒)」―の三つに限定されています。睡眠不足による疲労や朝の目覚ざめが悪いというような主観的な訴えは、不眠症と診断する上での症状ではなくなりました。

 眠りのサイクルは人それぞれです。長い睡眠時間が必要な人もいれば、短い時間でも十分な休息を取れる人もいます。どちらが良いというわけではなく、睡眠の条件は生まれもった体質や生活習慣に大きく左右されます。だから、早寝早起きをすればいい、というものでもないのです。自分に最適な眠りを見つけることが大切です。

 午前9時から仕事や学校が始まるのに起きられない、日中の眠気が強くて、仕事や勉強に集中できないなど社会生活に支障をきたす状態が週3回以上の頻度で3カ月以上続くときには「慢性不眠症」と診断され、治療の対象となります。わが国における有病率は6~8%と推定されていて、日中の眠気により、個人的な活動効率を下げるだけでなく、さまざまな社会的・経済的損失をもたらすことが分かってきました。2012年に国内で行われた調査によると、睡眠障害による損失は年間3兆5000億円に上ると推定されています。

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