アレルギー性鼻炎の貼り薬
服薬継続率の向上に期待
アレルギー性鼻炎の治療の基本は飲み薬だが、一昨年に貼り薬が登場した。「貼付(ちょうふ)剤」とも呼ばれ、1日1回貼るだけで、24時間効果が持続するのが特徴だ。使用法やメリットについて、日本医科大学付属病院(東京都文京区)耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大久保公裕部長に聞いた。
▽1日1回で効果が持続
アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを主症状とするアレルギー性疾患だ。ハウスダストなどが原因となり季節に関係なく年間を通して症状が表れる通年性と、スギ花粉やヒノキ花粉などによって季節限定で起こる季節性がある。
いずれも薬物治療が基本であり、抗ヒスタミン薬の飲み薬や点鼻薬が多く使用されているが、2018年4月に貼り薬が登場した。飲み薬として既に用いられていたエメダスチンフマル酸塩の経皮吸収型製剤(商品名アレサガテープ)である。
「この薬剤は、薬効成分が皮膚から徐々に吸収されるため、飲み薬のように胃腸に負担がかかりません。また、貼っている間は24時間血中濃度が一定に保たれ、効果が持続します」と大久保部長。
▽頻度は低いが、眠気に注意
貼付剤は、体内で吸収・分解される経路が飲み薬とは異なるため、さまざまな利点がある。水なしで服用でき、胃を通過しないため食事による投与タイミングの制限が不要である。また、嚥下(えんげ)障害のある人や、薬を飲むのが困難な人でも、容易に使用できる。
さらに、介護が必要な患者の場合、貼っていることが目視で確認できるため、家族や介護者による服薬管理が簡単で、服薬継続率の向上にもつながることが期待されるという。
使用法は、胸、上腕、背中、おなかのいずれかに貼り、24時間置きに貼り替える。同じ場所に続けて貼るとかゆみや赤くなるケースがあるため、貼付の部位を毎日変えることがポイントだ。副作用としては、臨床試験では4.9%の人に眠気が報告されている。副作用が表れた場合には、剥がせば薬の作用を止めることができる。
大久保部長は「アレルギー性鼻炎では、自分のライフスタイルに合わせて治療法を選べる時代になりました。飲み忘れや飲み過ぎが心配な人、高齢者など普段から多種類の薬剤を服用している人は、貼付剤を選択するのも一つの方法です」とアドバイスする。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/05/11 10:00)