歯学部トップインタビュー

単科大学から医療系総合大学へ
~SDGsで持続可能な未来を切り開く―大阪歯科大学歯学部~


大阪歯科大学楠葉キャンパス

大阪歯科大学楠葉キャンパス

 ◇学術大会挑戦で研究マインド涵養

 歯科の学生が自分で設定したテーマで研究し、その成果を、英語のポスタープレゼンテーション形式で競い合う学術大会・スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム(SCRP)が世界36カ国で実施されているが、日本選抜大会は1995年にスタートした。優勝すると米国大会に招待される。2010年には「う蝕予防を目的としたまんじゅうの製作と研究」で5年生が優勝。21年は「高齢者の口腔ケアのための過酢酸を含む新しい歯科用消毒剤の開発」で3年生が、22年は「分子動力学法を利用して脂質二重膜上で成長するハイドロキシアパタイトナノ結晶を制御する」で5年生が2年連続で準優勝している。

 ◇興味の尽きない歯周病の研究にまい進

 田中歯学部長は兵庫県で歯科医院を開業する父親にならって、大阪歯科大学歯学部を卒業後、大学院で博士号を取得して研究生活を続けた。「30代で留学したい」という思いに駆られ、自らアメリカの五つの大学に手紙を送ったという。

 「自分でチャレンジしていかないとチャンスは開けないと思ったんです。すると、アラバマ大学から2週間で返事がきました。歯周病の組織を電子顕微鏡で観察した研究論文が雑誌に掲載されたのですが、エディターがその大学の先生でした」

 1年3カ月の留学中、学会発表も経験し、海外でたくさんの友人を得たことが人生の貴重な経験として残った。

 梅田研究科長は祖母が50代で総義歯になり、義歯が合わずに困っていたことが歯科医を目指すきっかけになった。東京医科歯科大学で歯周病学講座に入り、大学院修了後、そのまま教員となる。助教時代には、文部省(当時)の在外研究員として、アメリカの南カリフォルニア大学に半年間赴任した。

 11年前から大阪歯科大学の歯周病学講座で、教育と研究に取り組んでいる。心血管疾患や糖尿病など全身疾患につながる歯周病菌の検出は長年の研究テーマだ。

 「歯周病の分野は基礎から臨床まで、やることがいくらでもあって興味が尽きません。口腔(こうくう)から全身疾患を防いで、国民の健康増進に貢献していきたい」

楠葉キャンパス内。2号館 講義・実習棟(左)と4号館 図書館・厚生棟 (右)

楠葉キャンパス内。2号館 講義・実習棟(左)と4号館 図書館・厚生棟 (右)

 ◇人々の健康を守る志を持ってほしい

 歯科医師を目指す学生に望むことは、「開業医なら自分は地域の人たちの健康を担っているという誇りと使命感を持って、より良い医療を進めていってほしい。糖尿病と歯科医療の関係など、常に問題意識を持って取り組んでいける歯科医師を目指してほしい」(梅田研究科長)

 「患者さんに求められる質の高い歯科医師になるためには、Science, Art & Heartの3拍子がそろってほしい。知識と技術を磨くのは当然のこと。他者の気持ち、心を把握して、患者さんに寄り添った治療をすることが大切です。口の中から人々の健康を守るという志を持ってほしいと思います」(田中歯学部長)
(ジャーナリスト/中山あゆみ)

田中 昭男(たなか・あきお) 1974年3月大阪歯科大学歯学部卒業。1978年3月大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯学博士)。1988年6月大阪歯科大学教授。2007年10月より(学)大阪歯科大学理事、22年4月より歯学部長。

梅田 誠(うめだ・まこと) 1983年3月東京医科歯科大学歯学部卒業。1987年東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯学博士)。2011年1月東京医科歯科大学講師。同年10月より大阪歯科大学主任教授。22年4月より大阪歯科大学大学院歯学研究科長。

【大阪歯科大学歯学部 沿革】
1911年 大阪歯科医学校創設
      13年 附属医院 開設
  17年 大阪歯科医学専門学校設立
  47年 大阪歯科大学(旧制)へ昇格
  49年 大阪歯科大学(旧制)歯学部開設
  51年 学校法人大阪歯科大学へ組織変更
  52年 大阪歯科大学(新制)歯学部設置認可
  61年 大学院歯学研究科(博士課程)設置
  97年 楠葉新学舎へ移転・天満橋学舎附属病院新築
2017年 医療保健学部開設
  18年 大学院医療保健学研究科(修士課程)開設
  20年 大学院医療保健学研究科(博士課程・後期)開設

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