歯学部トップインタビュー

単科大学から医療系総合大学へ
~SDGsで持続可能な未来を切り開く―大阪歯科大学歯学部~

 大阪歯科大学は1911年、藤原市太郎氏が有志の歯科医師らの協力を得て開校した大阪歯科医学校を起源とし、2022年に111周年を迎える伝統校である。「学校経営事業は営利に非ず、博愛公益のために努力するものなること」という藤原氏の言葉が、今日に至るまで建学の精神として受け継がれている。歯学部のある楠葉キャンパスは大阪と京都の中間にある樟葉駅から徒歩5分とアクセスが良く、大阪の中心地、天満橋にある大学附属病院は17診療科と11の専門外来を備える関西歯科の総合医療センターだ。2024年度には現在の歯学部、医療保健学部に加えて看護学部(仮称)が開設される予定で、「多職種連携を推進する医療系総合大学へと、さらなる発展を目指す」と田中昭男歯学部長は話す。

田中昭男歯学部長

田中昭男歯学部長

 ◇国家資格を持つ人材を育成し、SDGsに取り組む

 同大学は、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)17のうち、№1「貧困をなくそう」、№4「質の高い教育をみんなに」、№5「ジェンダー平等を実現しよう」の三つを目標に掲げている。

 「日本の国家資格があれば、就職しやすく、給料も高い。教育も質が高くなります。また、本学は女子学生の比率が5割を超えており、ジェンダー平等の実現に取り組んでいます」と田中歯学部長は話す。

 看護学部(仮称)が開設されれば、社会で活躍する、より多くの人材を育成することになり、さらなるSDGsの達成につながっていく。

 ◇口腔内から全身の健康を守る

 21年11月から研究実験センター、先進医療研究センター、事業化研究推進センターの三つを擁する組織として、医療イノベーション研究推進機構(トリミ=TRIMI=Translational Research Institute for Medical Innovation)を立ち上げ、研究体制を強化した。

 「『口腔科学からみんなの健康へ』を推進していこうと、主に歯周組織の再生や歯周病と全身の健康との関係に関する研究について、大学を挙げてしっかり進めていきたいと考えています」と梅田誠大学院歯学研究科長は説明する。

 歯を支える歯根膜の再生、心血管疾患や脳血管疾患につながる歯周病の原因菌、歯周病と糖尿病の関係など、科学研究費に採択された研究も少なくないという。

 「歯周病が全身の健康に及ぼす影響は医師からも注目されています。特に心臓血管疾患、脳血管疾患は死因の約4分の1を占めています。それを解決していくことで国民の健康増進に貢献していきたいと思います」(梅田研究科長)。

 研究成果を具体的に社会に生かしていくためには事業化を推進する仕組みが必要だ。今後は、それをTRIMIが担い、産学連携を推進していく。大きな目標の一つとして挙げるのが、人工的に歯根膜を再生し、自分の歯と同じような、かみ応えのあるインプラントを実現することだ。口の中から全身の健康を守るための具体的な取り組みが着々と進められている。

梅田誠大学院歯学研究科長

梅田誠大学院歯学研究科長

 ◇英語力のある学生を優遇し、国際化を推進

 国際力を高めるため、中国、アメリカ、英国など17大学と提携し、短期の国際交流を行っている。このため、高い語学力を持った学生を積極的に採用する方針だ。

 「入学試験で、英検2級、準1級等を所持していることを申告すれば、受験生の平均点に上乗せしています。国際交流に参加する学生は知識を吸収する意欲が旺盛で、いろんなことにチャレンジして、よく勉強するので歯科医師国家試験の合格率も非常に高いです」(田中歯学部長)

 ◇頻繁に試験を行い、高い国試合格率

 全学生の社会奉仕活動として、年間を通して授業開始前に大学周辺の清掃をしている。各学年1~2人ずつが参加し、教員、学長も付き添い、周囲の住民からも高評価を得ている。

 また、徹底した学習サポート体制が高い歯科医師国家試験の合格率につながっている。

 頻繁に小テストを行い、常に教員が学習の習得度を把握、学力不足の学生には大学院生まで動員して個別指導を徹底している。授業開始前8時30分からの早朝テストを週2~3回行うのも恒例だ。

 「朝早くから来ないと頭が働かないので、生活リズムをつくるためにも役立っています。本試験の受験資格として授業の出席率8割以上、成績が悪いと9割以上を課しています」(田中歯学部長)

 「国試の合格率が9年連続して新卒の平均以上を達成していますから、結果が伴っていると思います。常に、より高い目標を掲げていますので、国家試験の合格率も90%以上を目指しており、直近6年で2回超えることができました」(梅田研究科長)

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