治療・予防

病診連携で生存率が向上
~難治の膵がん(JA尾道総合病院 花田敬士副院長)~

 膵(すい)がんの早期診断、早期治療を進めようと、広島県尾道市で始まった診療所と病院の連携システムが成果を上げている。この取り組みを始めたJA尾道総合病院(同市)消化器内科の花田敬士副院長に話を聞いた。

膵臓(すいぞう)の位置

膵臓(すいぞう)の位置

 ◇5年生存率は10%程度

 膵臓は胃の裏側にあり、消化液やホルモンを作って体内に分泌している。膵がんは、新たな抗がん剤などが治療に導入されているものの、生存率が他の部位のがんと比べて低い。がん全体では患者の5年生存率は60%を超えるが、膵がんでは10%程度に過ぎない。

 花田副院長は膵がんが難治である理由について、「早期患者の4人に3人は腹痛などの症状がないため、発見されにくいのです。診断された時点で、既に手術ができないほどに進行していたり、他に転移したりしています」と説明する。

 その一方、喫煙、肥満、大量飲酒、糖尿病、家族に膵がん患者がいるなどの因子があると、リスクが高まることが分かっている。

 花田副院長は2007年、そのようなリスク因子を複数持つ人に対し、地域の診療所や中小病院で血液検査と超音波による腹部の画像検査を行い、膵がんが疑われれば中核病院で精密検査を行う仕組みをつくった。早期診断につながったケースが出てくると、徐々に市内全域にこの方法が広がっていった。

 ◇早期に診断・治療

 07年1月~20年1月までに同院で膵がんと診断された610人のうち、64人はステージ0または1という早期だった。「この段階なら、手術や抗がん剤による治療で長期生存が期待できます」と花田副院長。実際に同院の膵がん患者の5年生存率は約20%という。
 花田副院長はさらなる改善に向けて取り組む。「早期の膵がん患者の血液などに、早期診断に役立つ新たな『マーカー』のような物質がないかを他施設と共同で調べています。それが分かれば、健康診断の項目に取り入れることができます」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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