唾液の通り道に結石 =カルシウムの塊―唾石症
胆石や尿路結石と同様に、唾液の通り道に結石というカルシウムの塊ができる唾石症(だせきしょう)。唾石摘出術の経験豊富な横浜市立大学付属病院歯科・口腔(こうくう)外科・矯正歯科の岩井俊憲医師は「唾液を分泌する唾液腺の痛みや腫れに気付いたら、すぐ受診することが大事です」と呼び掛ける。
◇結石で唾液腺に詰まり
唾液は耳の前にある耳下腺や顎の下にある顎下腺(がっかせん)で作られ、導管という細い管を通って口の中に分泌される。唾石ができやすいのは顎下腺だ。脱水などで唾液の粘度が高くなると、細菌などを核に唾液中のカルシウム成分が結晶化してできると考えられている。
結石が問題になるのは、放置すると徐々に結石同士がくっついて大きな塊になり、唾液の流れをふさぐ点だ。唾液腺に痛みや腫れが生じ、食事が困難になることもある。また唾液には口内の洗浄作用があるため、分泌が不足すると口中の細菌が増える。それが唾液腺に入り込むと炎症を起こし、顔が腫れることもあるという。さらに放置すると、唾液腺の機能低下で唾液が出なくなってしまう人もいるそうだ。
「食事の時に顎の下や耳の前に痛みや腫れが生じ、30分~1時間程度で治まるということを繰り返す場合は、唾石症を疑い、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科に相談してほしい」と岩井医師。
◇内視鏡下摘出術が登場
従来、唾石症の治療は口の中の粘膜を切開し結石を摘出する手術が一般的だった。結石の大きさや位置によっては顎や耳付近の皮膚を大きく切り、唾液腺ごと取り除く。しかし、傷痕が残る上、顔面神経を傷つけるなどの危険性が指摘されていた。
そこで、横浜市立大学付属病院では、現在、岩井医師らを中心に内視鏡下での摘出手術が行われている。導管から細い内視鏡を挿入し、結石をつかんで取り出す方法だ。傷痕も残らず、4・5ミリ未満の小さな唾石なら外来で30分程度の手術で済むという。手術法は唾石の大きさやできた位置によって選択されるため、早期発見、早期治療が望ましいという。
「症状は一度出ても、結石が動くことで消えてしまうことがあります。しかし、放置すると石は徐々に大きくなっていきます。最初の症状を見逃さないようにしたいものです」と岩井医師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2016/09/21 15:49)