Dr.純子のメディカルサロン

「コミュニケーションスキルを磨く」 澤祥幸 岐阜市民病院診療局長

 海原 今のお仕事内容などをお教えください。

  地方の公立病院で「がんセンター」でがん診療部門の責任者をしています。聞こえはいいですが、常勤医師は私と先輩の副院長の2人のみです。各臓器別の専門医は多数いるので、各臓器別の専門医に協力してもらってチームでがん患者さんにとっての「解決法」を提供できるよう心掛けています。

 具体的には、合併症のために理想的な手術や強力な抗がん剤治療ができないとか、再発して治療法が見いだせないとか、そんなときにチームで、その患者さんにとって実現可能で最も効果的な対策がないか相談しています。

 国内では「キャンサーボード」と呼ばれていますが、多くの病院では多忙で年に数回しか開催していません。当院では、主治医や担当スタッフから要望があれば1週間以内に検討しています。

 一方、医師では数少ないですが、がんアドボカシー(患者の権利擁護)にも取り組んでいます。がんアドボカシーは乳がん患者さんの世界では活発ですが、予後が不良な肺がんにおいては10年遅れていると言われます。

 欧米の先進的な活動を参考に、日本の国民性や社会的背景に合わせた活動を地道に広げています。日本人は学力レベルが比較的高く、ほぼ均一なため、市民公開講座の開催、メディアを通じた取り組みの発信、肺がん患者さん向けガイドブックを通じた正しい情報の提供などをしてきました。現在は、世界肺がん学会や日本肺がん学会が展開しているアドボカシー活動にも参画しています。

 海原 17年10月には横浜で世界肺がん学会が開かれますね。先生は、患者さんのために市民も参加できるプログラムを企画なさっていらっしゃいます。今後もご活躍を期待しております。

(文 海原純子)



澤 祥幸(さわ としゆき) 岐阜市民病院診療局長(がんセンター長)
1984年岐阜大医学部卒業。岐阜大医学部付属病院を経て、大阪府立羽曳野病院(現大阪はびきの医療センター)で呼吸器学、特に肺がんを研修した後、93年より岐阜市民病院にて肺がんの集学的治療と臨床試験に従事。2006年に日本初のがん薬物療法専門医の一人となる。02年より国際肺がん連盟(Global Lung Cancer Coalition)のボードメンバー、14年より世界肺がん学会アドボカシー委員として国際的な肺がん患者支援活動に参画。
世界肺がん学会(2015年)にて

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