働く女性患者の「肌トラブル」をセルフケア
~がん治療と仕事の両立サポート、心も上向きに~
◇保湿剤の塗り方にもコツ
保清で気を付けるのは、ゴシゴシせず、なでるように洗い、皮膚の性質に近い弱酸性の洗浄剤を使うということ。しっかり泡立て、泡で汚れを浮かせて落とす。クリームや軟こうなどを塗っている部分は、肌に優しい素材のタオルなどを使うと汚れの落ちがいい。
朝の洗顔後や夜の入浴後は、十分保湿して肌のバリアー機能を守る。細胞間脂質の成分であるセラミドなどを含んだ保湿剤で潤いを補い、ワセリンなどの油性基剤を上からふたをするように塗布することで水分の蒸散を防ぐ。
肌トラブル専門の看護師、東島愛美(ひがしじま・あみ)さんは「時間がたつと乾燥が進むので、水気を拭き終えたら、できるだけ早く保湿して。乾燥が気になる時は小まめに塗ることが大切だ」と指摘する。
保湿剤の使用量の目安としては、軟こうは1回当たり、成人の人さし指の第1関節分(1FTU=finger-tip unit)が両手のひらの面積に相当する。ローションの場合は手のひらに1円玉くらい。これは約0.5グラムで、全身になると20グラムほどが必要になる。思った以上にたっぷり使う。
塗り方にもコツがある。右腕に塗る場合、左手で腕をつかみ、くるりと回転させるように左手を動かして塗る。「きめ、しわ、毛の流れは横向き。これらに沿って塗ると、角質層に届きやすい」と東島さん。
色素沈着も、保湿が一番のケア方法になる。色素沈着は、抗がん剤や放射線照射によって皮膚の基底層にあるメラニン色素を作る細胞が活発になり、増加したメラニン色素が表皮細胞に蓄積され多くなることが原因と考えられている。ターンオーバーが正常であれば、表皮細胞は分裂し押し上げられ、角質となりあかとして落ちていくが、ターンオーバーが滞るとメラニンの蓄積量が増える。新陳代謝を改善するためにも、保湿を続け健康な肌の状態に近づけたい。
最後の保護は、紫外線対策。日焼け止めは肌を刺激しにくいノンケミカル(紫外線散乱剤)製品を選び、一年を通して屋内でも「守る」ことを意識することが大切だ。

「深呼吸して、リラックスして、血液の循環をよくしながら行いましょう」と村橋さん
◇肌と自分をいたわる時間
セルフケアの時間をより充実させるために、静脈とリンパにたまった老廃物を流すフェースマッサージの講義では、参加者たちがその場で実際に練習。講師を務める一般社団法人アピアランス・サポート東京の相談室長、村橋紀有子(むらはし・ようこ)さんは、がん患者の外見の悩みへのアドバイス、ウイッグ選びのサポートや調整などの施術を行っている。「外見が整うと、治療の副作用による変化への不安が和らぎ、自信も持てます」と優しく語る。
マッサージは、解剖医学に基づき医師が考案した施術で、むくみの解消、小顔などが期待できるという。「リフレッシュにもなり、前向きに治療や仕事に取り組む後押しになるはず」(村橋さん)。
(2025/03/11 05:00)